コードのエレガンスは、読んだ人が迷わず理解できる読みやすさにあります。
難しい設計よりも、日々の小さな工夫が効果を生みます。
本記事では、初心者でも今日から実践できる5つのコツと、スタイルの整え方、進め方をやさしく解説します。
エレガントなコードとは?プログラミング初心者向け
読みやすさが最優先
エレガントなコードとは、読んだ瞬間に意図が伝わるコードのことです。
コードは一度書いて何度も読み返されます。
書いた本人だけでなく、未来の自分や他の人が読んでも迷わないように、名前、構造、コメントを整えます。
「誰が読んでも同じ理解にたどり着く」ことを目標にすると、自然と品質が上がります。
以下は名前の付け方だけで読みやすさが変わる例です。
# NG: 意味が伝わらない
a = 0
for x in arr:
a += x
# OK: 何を足して合計しているかが分かる
total_price = 0
for price in prices:
total_price += price
同じ処理でも「名前」が伝える情報量で理解の速さが変わります。
短くても具体的な単語を選ぶことが基本です。
余計な複雑さを減らす
複雑さはバグと迷いの温床です。
入れ子(ネスト)の深い条件、回りくどい書き方、使われない変数は避けましょう。
先に「お断り」する(ガード節)と読みやすくなります。
# NG: 条件が深くて追いにくい
def apply_discount(user, price):
if user is not None:
if user.is_member:
if price > 1000:
return price * 0.9
return price
# OK: 先に戻って浅くする
def apply_discount(user, price):
if user is None:
return price
if not user.is_member:
return price
if price <= 1000:
return price
return price * 0.9
「先に返す」と「同じ段に並べる」を徹底すると、目線の移動が少なくなり理解が速くなります。
読みやすいエレガントなコードにするコツ5選
命名は具体的で短く
「名は体を表す」ので、用途が一目で分かる単語を選びます。
データには名詞、関数には動詞を使い、Pythonならlower_snake_caseに統一します。
長すぎる名前は避けつつ、短すぎて意味が分からないのも避けます。
命名のNG/OK例(短く具体的に):
| 用途 | NG | OK |
|---|---|---|
| 合計金額 | a, sum1 | total_price |
| ログイン状態 | flag, f | is_logged_in |
| 期限(日付) | d, dt | deadline_date |
| ユーザー一覧 | data | users |
| 税込計算関数 | calc | add_tax |
「誰が見ても同じ意味に読めるか」を最後に1回確認すると命名の質が安定します。
関数は短く1つの役割にする
1つの関数には1つの目的だけを持たせると読みやすくなります。
目安として5〜15行程度(状況により前後)を意識し、まとまりごとに小さく分けましょう。
# NG: いろいろ混ざって長い
def process_order(order):
# 合計
total = 0
for item in order.items:
total += item.price * item.qty
# 税
total *= 1.1
# 出力
print(f"Total: {total} JPY")
return total
# OK: 役割ごとに分ける
def calc_total(order):
total = 0
for item in order.items:
total += item.price * item.qty
return total
def with_tax(amount):
return amount * 1.1
def print_total(total):
print(f"Total: {total} JPY")
def process_order(order):
subtotal = calc_total(order)
total = with_tax(subtotal)
print_total(total)
return total
短い関数はテストもしやすく、バグが出た時に原因箇所を特定しやすくなります。
コメントは「なぜ」を書く
コードは「何を」「どうやるか」を示し、コメントは「なぜそうするか」を補います。
目に見えない理由(仕様、制約、過去の不具合)を短く残しましょう。
動作の説明だけのコメントは冗長になりがちです。
def normalize_username(name):
# なぜ: 外部サービスAが大文字を許可しないため(2025-01仕様)
# 参考: 仕様URLを記録しておくと後で助かる
return name.strip().lower()
「このコメントが無いと将来の自分が悩むか」で書くかを判断すると過不足が減ります。
条件分岐は浅くする
ネストを浅くするだけで、追う行数と脳の負担が一気に減ります。
早めに返す、デフォルトを先に決める、同じ条件をまとめるのがコツです。
# NG: ネストが深い
def can_access(user):
if user:
if user.is_active:
if not user.is_banned:
return True
return False
# OK: 早めに返す(ガード節)
def can_access(user):
if not user:
return False
if not user.is_active:
return False
if user.is_banned:
return False
return True
「elseを減らす」「条件を肯定形にする」だけでも可読性が上がります。
同じ処理は共通化して重複をなくす
同じコードをコピペすると、どれか1つだけ直し忘れる危険が増えます。
共通の関数にまとめて1か所で管理しましょう。
# NG: 2か所に同じフォーマット処理
print(f"¥{int(price):,}")
# ...別の場所でも...
print(f"¥{int(price):,}")
# OK: 共通化
def format_jpy(amount):
return f"¥{int(amount):,}"
print(format_jpy(price))
print(format_jpy(discounted_price))
「同じ3行が2回出たら関数化を検討」が分かりやすい目安です。
コーディングスタイル(一貫性)の基本
インデントとスペースを統一
インデント(字下げ)がバラバラだと読む人は一瞬で迷います。
Pythonならスペース4つが一般的です。
演算子やカンマの後ろのスペースも統一しましょう。
# NG: インデントとスペースが不統一
def add(a,b):
if(a>0):
return a+b
else:
return(a + b)
# OK: 揃える
def add(a, b):
if a > 0:
return a + b
return a + b
「見た目の揃い」は読みやすさに直結し、バグの早期発見にも役立ちます。
自動整形ツールで整える
人の目と手だけで整えるのは大変なので、エディタに自動整形を任せます。
保存時に実行されるよう設定すると負担が減ります。
「保存で自動整形」を最初に設定しておくと、常にきれいな状態を保てます。
代表的なツール(例):
| 言語 | ツール | ヒント |
|---|---|---|
| Python | Black | 厳密なルールで自動整形。設定が少なく初心者向け |
| JavaScript/TypeScript | Prettier | VS Codeと相性が良く、保存時実行が簡単 |
| Go | gofmt | 標準ツール。チーム全員が同じ結果に |
| CSS/JSON/Markdown | Prettier | コード以外の整形にも有効 |
ツールで「形」をそろえ、人の力は「内容」を良くすることに使いましょう。
ファイル名や命名規則を決める
同じプロジェクトでは同じルールが読みやすさを支えます。
ファイル名や変数名の書き方を最初に決めて、全体を揃えます。
例(プロジェクトの種類ごとに統一):
| 対象 | 推奨例 | ポイント |
|---|---|---|
| Pythonファイル名 | order_service.py | 小文字+アンダースコア(snake_case) |
| JavaScriptファイル名 | order-service.js | 小文字+ハイフン(kebab-case) |
| 定数名 | MAX_RETRY | 大文字+アンダースコア |
| クラス名 | OrderService | 単語の先頭を大文字(PascalCase) |
| 画像/静的ファイル | user-icon.png | 小文字+ハイフンで読みやすく |
ルールは短くシンプルにし、迷った時に見返せる場所に書いておきます。
初心者が実践しやすい進め方
小さく実装→動作確認→少しずつ見直す
一度に完璧を目指さず、小さく作ってすぐ動かし、少しずつ良くします。
この繰り返しが結果的に最短です。
- 小さく作る(まずは必要最小限の機能だけ)
- 動かす(動作確認と簡単なテスト)
- 見直す(命名、分割、コメント、重複の削減)
「まずは動く小さな状態」を作ると、改善点がはっきり見えてきます。
読みやすいサンプルコードを真似る
良い例を真似るのが上達の近道です。
公式チュートリアルや書籍のサンプル、信頼できる入門記事のコードを、まずは真似して書いてみましょう。
少し慣れたら、自分の言葉(命名)や自分の関数分割に置き換えていきます。
写経→少し変更→自分の形の順がやりやすいです。
ルールをチェックリスト化する
毎回ゼロから悩まないために、短いチェックリストを用意します。
タスクリストではなく、確認ポイントとして机の横に置いておくと便利です。
例(机の横に1枚置く):
| 項目 | 確認すること | 例 |
|---|---|---|
| 命名 | 短く具体的か | is_active, total_price |
| 関数の役割 | 1つに絞れているか | 分割できる場所はないか |
| コメント | 「なぜ」が書けているか | 仕様や理由、参考リンク |
| 条件分岐 | 浅くできているか | 早めにreturnできるか |
| 重複 | 同じ処理が2回以上ないか | 共通関数に切り出す |
「毎回同じ失敗を繰り返さない仕組み」を作ると、着実に上達します。
まとめ
エレガントなコードの土台は読みやすさです。
命名を具体的にし、関数を短く保ち、コメントで「なぜ」を伝え、条件分岐を浅くし、重複を減らす。
この5点を徹底するだけで、コードはぐっと伝わりやすくなります。
さらに、一貫したスタイルと自動整形で見た目を揃え、小さく作って見直すサイクルを回せば、初心者でも無理なく品質を高められます。
難しいテクニックより、毎日の小さな整え方の積み重ねが、読みやすいエレガントなコードへの近道です。
