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OSは何をしている?プロセス・メモリ・ファイル管理の要点

プログラムはどうやって動き、データはどこに置かれ、保存はどう管理されているのでしょうか。

舞台裏ではOSがプロセス、メモリ、ファイルを調整しています。

本記事では初心者向けに、その役割を具体例とともにやさしく解説します。

開発で出会う基本用語や操作の意味も押さえ、実践に役立つ理解を目指します。

OS(オペレーティングシステム)の基本

OSの役割とは?初心者向け

OSは土台であり交通整理役

OSはアプリが安全かつ快適に動くための土台であり、CPUやメモリ、ストレージ、ネットワーク、周辺機器といった資源を配分します。

OSの核心は、限られた資源を公平に割り当て、アプリ同士が干渉しないよう保護することです。

その結果、開発者は複雑なハードウェア操作を意識せずに、アプリのロジックに集中できます。

代表的なOSと共通点

Windows、macOS、Linuxなどは見た目や細部のコマンドは違いますが、プロセス管理、メモリ管理、ファイル管理という3本柱は共通です。

どのOSでも「動かす・覚えておく・保存する」を分担していると理解すると全体像がつかみやすくなります。

プログラミングでOSがすること

システムコールの橋渡し

アプリがファイルを開いたりネット通信したりする時、最終的にはOSの機能を呼び出します。

これがシステムコールです。

例えば、POSIX系ならopenreadwriteforkexec、WindowsならCreateFileReadFileなどが該当します。

プログラミング言語の標準ライブラリは、OSのシステムコールを安全・便利に包む役目を持つため、多くの場合はライブラリ関数を使うだけでOSの力を借りられます。

エラーと例外の扱い

OSは失敗時に戻り値やエラーコードで状況を知らせます。

例えばopen-1を返しerrnoEPERMになる、といった形です。

高級言語では例外で表現されることもあります。

OS由来のエラーは現実の制約(権限不足、存在しないパス、ディスク満杯など)を示すので、チェックとリカバリを設計に組み込みましょう。

下表は、よくあるアプリの要求と、それに対してOSが担う処理の対応関係です。

アプリの要求OSがすること代表的な呼び出しやツール例
ファイルを開くパスの解決、権限確認、ハンドル(記述子)の発行open/CreateFile
プロセスを作るアドレス空間の確保、初期化、IDの発行fork+exec/CreateProcess
メモリを確保物理メモリとの対応付け、保護設定malloc内部でbrkmmapなど
ネット接続ソケットの作成、ルーティング、ポート管理socketconnect

「OSが何を肩代わりしているか」を意識すると、エラー原因の推測や最適化の着眼点が明確になります

ハードウェアとアプリの仲介

デバイスドライバと抽象化

OSはデバイスドライバを通じて多様なハードウェアを統一的に扱えるようにします。

プリンタやディスクのメーカーが違っても、アプリは共通の手順でアクセスできます。

抽象化によって、アプリは「どう動くか」に集中し「どの機器か」を意識しなくて済むのが利点です。

セキュリティと権限境界

アプリはユーザモード、OSの中核はカーネルモードで動くのが一般的です。

モード分離プロセス隔離により、不正なメモリアクセスや特権操作を防ぎます。

OSは「守る門番」と「仲介」の両役を担い、安定性と安全性を両立させます

プロセス管理の基本(アプリの動かし方)

プロセスとは?タスクの単位

プロセスとスレッドの違い

プロセスは実行中アプリの単位で、独自のメモリ空間や資源を持ちます。

一方スレッドは同一プロセス内で並列に動く軽量な実行単位です。

「プロセスは家、スレッドは部屋」の比喩で、家同士は分離、部屋同士は共有が多いと覚えると理解しやすいでしょう。

識別にはPID(プロセスID)が使われます。

マルチタスクのイメージ(同時に実行)

スケジューラとタイムスライス

1つのCPUでも高速にタスクを切り替えることで同時実行のように見せます。

OSのスケジューラが各プロセスに短い持ち時間(タイムスライス)を割り振り、状況に応じて優先度も加味します。

切り替えの瞬間にはコンテキスト(レジスタやプログラムカウンタ)が保存・復元されるため、アプリは中断を意識せずに続きから実行できます。

実行・停止・切り替えをOSが管理

状態遷移(実行中/待機/停止)

プロセスは入力待ちやI/O待ちで止まり、CPUが空いたら再開します。

OSは状態を管理して最適にCPUを回すことで、全体の応答性とスループットを高めます。

状態意味典型的なきっかけ
実行可能(Ready)すぐに実行できるが順番待ち他プロセスがCPU使用中
実行中(Running)CPUを占有して処理中タイムスライス開始
待機/ブロック(Waiting)入出力やロック待ちで停止ディスクI/O、ネット受信待ち
終了(Terminated)実行完了、またはエラー/終了指示で停止正常終了、例外、強制終了

フリーズ時の対処(プロセス終了)

強制終了の仕組みと注意点

アプリが反応しない時は対象プロセスを終了します。

WindowsはCtrl+Shift+Escでタスクマネージャ、macOSは⌘+Option+Escで強制終了ダイアログ、Unix系はpsでPIDを調べてkill PIDが定番です。

必要ならWindowsのtaskkill /PIDkill -9のような強制信号もありますが、保存していないデータは失われる可能性が高いため、まずは通常の終了を試すのが安全です。

終了は最後の手段と心得て、原因調査と再発防止に活かしましょう

メモリ管理の基本(データの置き場所)

メモリとは?一時的な作業スペース

メインメモリとストレージの違い

メインメモリ(RAM)は高速だが電源断で消え、ストレージ(SSD/HDD)は遅いが保持されます。

アプリの「いま必要な作業データ」はメモリ、「あとで使う保存データ」はストレージという役割分担を覚えると設計が考えやすくなります。

安全に分ける仕組み(保護)

アドレス空間とユーザ/カーネル

各プロセスは独立した仮想アドレス空間を持ち、他プロセスのメモリに直接触れられません。

これはCPUのMMUがページテーブルを参照して実現します。

仮想化により「自分専用に見える広い空間」と「実際の物理メモリ」が安全に対応付けられるのがポイントです。

セグメンテーション/ページングの超概要

現代では主にページングが使われ、メモリは小さなページ単位で管理されます。

不正アクセス時はOSが検出し、Unix系ならSegmentation fault、WindowsならAccess Violationとして停止します。

保護があるからこそ、一つのバグが全体を巻き込まないのです。

足りない時の対応(仮想メモリのイメージ)

スワップとページフォールト

物理メモリが不足すると、使っていないページをディスク上のスワップ領域(Windowsのpagefile、Unix系のswapファイル)へ退避します。

必要になればページフォールトを契機に戻されます。

仮想メモリにより「足りない時だけ一時退避」という安全弁が働く一方、過度なスワップは著しい遅さにつながるため、メモリ使用量を意識することが大切です。

使い終えたメモリを返す管理

自動管理と手動管理(ガーベジコレクション)

OSはプロセスに大きな塊を渡し、プロセス内ではランタイムやヒープアロケータがmalloc/freenew/delete、ガーベジコレクタで細かな割り当てを管理します。

プロセス終了時にはOSが確実に回収するものの、実行中のメモリリークは性能低下やクラッシュの原因です。

「確保したら解放する」、あるいはGC言語でも寿命を短く保つ設計が有効です。

ファイル管理の基本(保存と読み書き)

ファイルとフォルダの関係

階層構造の考え方

ファイルは名前付きのデータ、フォルダ(ディレクトリ)はファイルや別のフォルダを入れる入れ物です。

ルートからの階層構造で整理され、OSはこの木構造上で「どこに何があるか」を高速に見つけられるようインデックスを持つ設計になっています。

権限の考え方(読み/書き/実行)

所有者と権限ビット/ACL

Unix系では所有者・グループ・その他に対して読み(r)・書き(w)・実行(x)の権限を設定します。

WindowsではACLでより細かい制御が可能です。

権限は安全の第一歩で、誤操作や不正アクセスを未然に防ぐために重要です。

権限できること
読み(Read)内容の閲覧cat file.txtで表示
書き(Write)変更・保存エディタで上書き保存
実行(Execute)プログラムとして起動./appを実行

数値表記755は「所有者はrwx、他はrx」を意味します。

最小権限の原則を守ると安全です。

パスとファイル名の基礎

絶対パスと相対パス

絶対パスはルートからの完全な場所、相対パスは現在の場所からの道筋です。

Linuxなら/home/user/report.txt、WindowsならC:\Users\User\report.txtが絶対パスです。

相対パスでは./が現在、../が1つ上を指します。

区切り文字はUnix系が/、Windowsが\と異なる点に注意しましょう。

OSごとに使えない文字や大文字小文字の扱いが違うため、移植性が必要なら制限に合わせた命名が無難です。

ファイルシステムの役割(かんたん解説)

代表的なファイルシステムと特徴

ファイルシステムは「名前付け」「配置」「故障時の回復」を担います。

ext4(Linux)、NTFS(Windows)、APFS(macOS)、FAT32/ExFAT(可搬メディア)などが代表例です。

ジャーナリングやスナップショット、メタデータ管理(inodeやB+木)などの技術で整合性を保ちます。

アプリから見ると違いは意識しなくてよいことが多い一方、大容量や大量小ファイルで性能差が出るため、用途に応じた選択が行われます。

まとめ

本記事ではOSの基本役割を、プロセス管理メモリ管理ファイル管理の3視点から解説しました。

OSは資源を安全に配り、アプリとハードを仲介し、失敗時には一貫したエラーとして知らせることで、開発者の生産性とシステムの安定性を支えています。

次の一歩として、psTask Managerでプロセスを観察し、freeActivity Monitorでメモリの使い方を眺め、ls -licaclsで権限を確認してみてください。

実際に触れることで、OSの抽象化のありがたみと限界がより鮮明に分かるはずです。

この記事を書いた人
エーテリア編集部
エーテリア編集部

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