WordPressが標準エディタをグーテンベルク(ブロックエディタ)へと移行してから、かなりの年月が経過しました。
2026年現在、WordPressの進化は凄まじく、フルサイト編集(FSE)が当たり前の時代となっています。
しかし、公式プラグインである「Classic Editor」の有効インストール数は依然として高く、多くのユーザーに愛用され続けています。
なぜ最新の機能が次々と追加される中で、あえて「古い」とされるクラシックエディタを使い続ける人が後を絶たないのでしょうか。
本記事では、プロのライターやWeb制作現場の視点から、クラシックエディタが選ばれ続ける本質的な理由を紐解いていきます。
2026年においてもClassic Editorが存続している背景
当初、Classic Editorのサポートは数年で終了すると予測されていましたが、結果として幾度も延長されてきました。
これは、単なる「変化への抵抗」ではなく、ビジネスの現場において実用的な価値が極めて高いことを証明しています。
特に大規模な企業サイトやニュースメディアにおいて、過去数万件に及ぶ記事資産をブロックエディタ化することのリスクは無視できません。
また、2026年現在のブロックエディタは非常に多機能ですが、その多機能さが逆に「執筆に集中できない」という副作用を生んでいる側面もあります。
公式サポートの継続と安心感
WordPressコミュニティは、既存ユーザーの利便性を損なわないよう、Classic Editorプラグインのメンテナンスを継続しています。
セキュリティアップデートが適切に行われているため、「古いから危険」という論理が必ずしも当てはまらない状態が維持されています。
開発者側も、複雑なブロック構造よりもシンプルなHTML出力を好む層が一定数いることを重く受け止めています。
理由1:執筆スピードと直感的な操作性
多くのプロライターがクラシックエディタを離れない最大の理由は、その圧倒的な執筆スピードにあります。
ブロックエディタは、見出しや段落ごとに「ブロック」を追加する操作が必要ですが、これは文章の思考を中断させる要因になり得ます。
一方で、クラシックエディタは従来のワープロソフトと同じ感覚で、流れるように文字を入力することが可能です。
思考を妨げないシームレスな入力体験
テキストモード(HTMLモード)を駆使するユーザーにとって、余計なタグが自動挿入されないクラシックエディタは非常に扱いやすいツールです。
ショートカットキーを駆使してマークアップを行う際、ブロックの階層構造を意識する必要がないため、作業時間が大幅に短縮されます。
特に数千文字から一万文字を超える長文記事を執筆する場合、スクロールの軽快さや動作のレスポンスにおいて、クラシックエディタに軍配が上がるケースが少なくありません。
マークダウン記法との相性
外部のエディタでマークダウン記法を用いて執筆し、WordPressにペーストするフローを持つライターにとっても、クラシックエディタは理想的です。
ブロックエディタではペースト時に意図しないブロック分割が発生することがありますが、クラシックエディタなら書式が崩れる心配がほとんどありません。
理由2:レガシーシステムやカスタムフィールドとの親和性
Web制作の現場では、高度にカスタマイズされたWordPressサイトが多数運用されています。
そうしたサイトでは、Advanced Custom Fields (ACF) などのプラグインを利用して、独自の入力画面を構築していることが多いのが実情です。
カスタムメタボックスの安定性
ブロックエディタ上でもカスタムフィールドは利用可能ですが、表示位置やUIが従来のサイドバーや下部に限定され、使い勝手が変わってしまいます。
クラシックエディタであれば、設計通りのUIでデータを入力できるため、コンテンツ管理のミスを防ぐことができます。
特に業務システムに近い運用をしているサイトでは、UIの変更がオペレーションコストの増大に直結するため、あえて変更しないという選択がなされます。
独自のショートコード運用
長年運用されているサイトでは、独自のショートコードを多用して複雑なレイアウトを実現している場合があります。
これらのショートコードは、ブロックエディタの「ショートコードブロック」でも動作しますが、編集画面上でのプレビューが困難です。
クラシックエディタであれば、ビジュアルモードとテキストモードを切り替えるだけで、これまでの運用フローを変えずに記事を作成できます。
理由3:出力されるHTMLのシンプルさ
SEO(検索エンジン最適化)や表示速度を極限まで追求するエンジニアにとって、HTMLの「クリーンさ」は重要な指標です。
ブロックエディタは、各要素をラップするために多くの<div>タグや特有のコメントアウト、CSSクラスを出力します。
不要なコードの排除による軽量化
クラシックエディタから出力されるHTMLは、基本的にユーザーが記述したもののみで構成されます。
これにより、DOMツリーが深くならず、ブラウザのレンダリング負荷を軽減できるというメリットがあります。
2026年のWeb標準においても、シンプルでセマンティックなHTMLは、アクセシビリティの観点から高く評価されています。
フロントエンド開発の自由度
ブロックエディタ専用のスタイルガイドに従う必要がないため、テーマ開発者は自由なCSS設計が可能です。
特に「ヘッドレスWordPress」として運用する場合、プレーンなコンテンツを返すクラシックエディタの方がAPIとの親和性が高い場面もあります。
クラシックエディタとブロックエディタの比較
それぞれの特徴を理解するために、主要な要素を比較表にまとめました。
| 比較項目 | Classic Editor | Block Editor (Gutenberg) |
|---|---|---|
| 主な操作感 | ワープロソフト・テキスト入力中心 | パーツを組み合わせるレイアウト中心 |
| 執筆スピード | 非常に速い(特に長文) | 慣れが必要(装飾は速い) |
| HTMLの清浄度 | 非常に高い(シンプル) | 低い(独自コードが含まれる) |
| デザイン性 | 限定的(CSSに依存) | 高い(エディタ上で完結) |
| 学習コスト | 低い | 高い |
| 将来の拡張性 | 保守フェーズ | WordPressの主力開発対象 |
特定の条件下でクラシックエディタを強制する方法
サイト全体ではなく、特定の投稿タイプや特定のユーザーのみクラシックエディタを使用したい場合があります。
プラグインを導入する以外にも、functions.phpにコードを記述することで柔軟に制御が可能です。
以下に、全ての投稿に対してブロックエディタを無効化する基本的なコード例を示します。
/**
* 全ての投稿タイプでブロックエディタを無効化する
*/
add_filter('use_block_editor_for_post', '__return_false', 10);
/**
* 特定の投稿タイプ(例:news)のみブロックエディタを無効化する場合
*/
add_filter('use_block_editor_for_post_type', function($use_block_editor, $post_type) {
if ($post_type === 'news') {
return false;
}
return $use_block_editor;
}, 10, 2);
このように、開発側の意図によってエディタを出し分けることができるのも、WordPressの柔軟な設計のおかげです。
現場の声:なぜ彼らは「戻る」のか
一度ブロックエディタに移行したものの、最終的にクラシックエディタに戻ってくるユーザーも少なくありません。
その多くは、「記事を書くこと」以外の操作に時間を取られたくないというプロ意識の高いユーザーです。
ブロックを探す手間、マージンを調整する手間、それらは読者に届ける「内容」の質を向上させるものではないと考える層がいます。
また、スマートフォンのブラウザから急ぎで修正を行う際、ブロックエディタの重いUIよりも、クラシックエディタのシンプルなテキストエリアの方が確実な操作を行えるという意見もあります。
小規模サイトにおけるメリット
複雑なレイアウトを必要としない個人ブログやシンプルな企業のお知らせ投稿であれば、クラシックエディタで十分事足ります。
機能を絞ることで、システムのアップデートに伴うバグの発生確率を抑えることができ、「壊れにくいサイト」を維持しやすいのも大きな利点です。
まとめ
2026年という最新のWordPress環境においても、Classic Editorが選ばれ続けるのには明確な理由があります。
それは、「効率的な執筆フロー」「既存資産の継承」「HTMLのシンプルさ」という、コンテンツ制作の根幹に関わる価値を提供し続けているからです。
ブロックエディタは確かに表現力を高めましたが、一方で「テキストを書く」という純粋な行為においては、クラシックエディタの洗練されたシンプルさに分がある場面も多々あります。
どちらのエディタが優れているかという議論ではなく、プロジェクトの目的や運用体制に合わせて最適なツールを選択することが、Webサイト運営における正解と言えるでしょう。
もしあなたが今のエディタにストレスを感じているのであれば、あえてクラシックな環境に戻ってみることで、執筆の楽しさを再発見できるかもしれません。
今後もClassic Editorは、WordPressという多様なエコシステムの中で、確かな存在感を放ち続けるはずです。
