2025年9月のTIOBE Indexは、Perlのトップ10復帰というサプライズで幕を開けました。
Pythonは25.98%で独走体制を強化し、C++やC、Javaは小幅調整の範囲にとどまります。
ニッチ領域で存在感を増すDelphiやAda、そして伸びが一服したRustなど、「指標の読み方」も含めて動向を丁寧に解説します。
2025年9月 TIOBE人気プログラミング言語ランキング ハイライト

Perlがトップ10復帰 指標要因で急浮上
今回最大のトピックは、Perlが27位から10位へジャンプアップしたことです。
シェアは2.03%で、前年同月比+1.33ポイントと大幅に伸びました。
順位の跳ね上がりは、TIOBEの算出指標に含まれるウェブ検索や書籍在庫などの露出度が強く作用した結果とみられます。
TIOBE側は技術的な要因としてAmazonにおけるPerl書籍数の多さを示しつつ、実態的な理由は断定できないとコメントしています。
コミュニティ側の文脈では、Perl 5系の継続的アップデートや、長年の論点だったPerl 6の名称変更と分離によりRakuへと落ち着いたこと(Rakuは129位)が、外部露出の増加や再評価につながった可能性があります。
とはいえ、「採用が急増した」ではなく「TIOBEの特性が表面化した」と捉えるのが妥当です。
Pythonが25.98%で独走 2位に大差
Pythonは25.98%で1位を堅持し、前年比+5.81ポイントと上げ幅も最大でした。
2位のC++(8.80%)との差は約17.2ポイントに広がり、独走状態がさらに鮮明になっています。
AIとデータサイエンスの裾野拡大、教育用途でのデファクト、そして幅広いライブラリ群が継続的に追い風です。
生成AIの普及はエコシステムの情報量と学習需要を押し上げ、TIOBEのような露出度連動の指標では特に効きやすいと考えられます。
C++ C Javaは小幅減で横並び
C++は8.80%(前年同月比-1.94)、Cは8.65%(-0.24)、Javaは8.35%(-1.09)と、いずれも小幅減のレンジに収まりました。
順位はC++が2位、Cが3位、Javaが4位です。
組込みやHPC、ゲーム分野のC/C++、企業情報システムのJavaという定位置は変わっていません。
「Python一強+C/C++/Javaの横並び」という構図は2025年も続いており、季節要因やニュースフローに応じた微調整の範囲での推移といえます。
DelphiとAdaが上昇 Rustは一服
Delphi/Object Pascalは9位で2.26%(+0.49)、Adaは14位で1.27%(+0.56)と着実に上昇しました。
一方、Rustは18位で1.01%(-0.31)と伸びが一服しています。
Delphiは既存資産の保守と業務アプリケーションで根強さを発揮し、Adaは安全規格準拠が必須となる防衛・宇宙・産業制御領域で再評価されています。
Rustはコミュニティ活況や求人増に比してTIOBEでは伸びにくい傾向があり、TIOBEが「モダン開発の現場感」を直接測る指標ではない点に留意が必要です。
なお、PYPLではPython—Java—C/C++—JavaScript—R—…—Rust—Swiftの順となっており、Perlの急伸はPYPLでは確認できません。
この差は、各指標が何を測っているかの違いに起因します。
TIOBE TOP10 言語別動向 2025年9月
本章では、トップ10それぞれの現況と読み筋を短く整理します。
まずは全体像としてトップ20の一覧を確認します。
順位(Sep 2025) | 昨年順位(Sep 2024) | 言語 | シェア | 前年比 |
---|---|---|---|---|
1 | 1 | Python | 25.98% | +5.81 |
2 | 2 | C++ | 8.80% | -1.94 |
3 | 4 | C | 8.65% | -0.24 |
4 | 3 | Java | 8.35% | -1.09 |
5 | 5 | C# | 6.38% | +0.30 |
6 | 6 | JavaScript | 3.22% | -0.70 |
7 | 7 | Visual Basic | 2.84% | +0.14 |
8 | 8 | Go | 2.32% | -0.03 |
9 | 11 | Delphi/Object Pascal | 2.26% | +0.49 |
10 | 27 | Perl | 2.03% | +1.33 |
11 | 9 | SQL | 1.86% | -0.08 |
12 | 10 | Fortran | 1.49% | -0.29 |
13 | 15 | R | 1.43% | +0.23 |
14 | 26 | Ada | 1.27% | +0.56 |
15 | 13 | PHP | 1.25% | -0.20 |
16 | 17 | Scratch | 1.18% | +0.07 |
17 | 21 | Assembly language | 1.04% | +0.05 |
18 | 14 | Rust | 1.01% | -0.31 |
19 | 12 | MATLAB | 0.98% | -0.49 |
20 | 18 | Kotlin | 0.95% | -0.14 |
1位 Python 25.98% 独走体制
Pythonはシェア25.98%で首位固めが続きます。
AIとデータ分析、教育、スクリプティングまでワイドレンジに浸透しており、学習資源の圧倒的な豊富さが露出度指数でも優位に働いています。
ビジネス現場ではプロトタイピングからMLパイプラインの本番運用までを1言語でつなぎやすく、学習コスト対効果の高さが評価されています。
2位 C++ 8.80% 減速も2位維持
C++は-1.94ポイントの調整ながら2位を維持しました。
モダンC++の標準化進展により生産性は改善しつつも、言語の複雑さは一定の学習負荷を伴います。
高性能ネイティブ領域での堅調な需要は揺らいでおらず、ゲーム、HPC、金融工学、リアルタイム処理などでの中核が続きます。
3位 C 8.65% 安定推移
Cは-0.24ポイントと微減の範囲に収まりました。
OSやドライバ、組込み基盤など「最後はC」の現場は根強く、長期運用資産の保守・拡張が露出度を底支えしています。
メモリ安全性への社会的要請は高まる一方で、既存資産のスコープは依然として広範です。
4位 Java 8.35% 減少傾向
Javaは-1.09ポイントで4位。
クラウド時代に合わせたリリースサイクル短縮やJIT/GCの改善が続く一方、モダンWebバックエンドの多様化で露出度は横ばい〜微減の局面が続きます。
企業システムの基幹としての地位は堅く、長期案件では選好され続けています。
5位 C# 6.38% 緩やかに上昇
C#は+0.30ポイントで地味ながら上昇。
クラウドネイティブやデスクトップ、ゲーム(Unity)まで広い守備範囲を持ち、.NETエコシステムの成熟が学習・書籍・検索露出の増加に寄与しています。
6位 JavaScript 3.22% 伸び悩み
JavaScriptは-0.70ポイント。
フロントエンドの多様化やJS以外の選択肢の増加により、露出度の伸びはやや鈍化しています。
とはいえ、Webクライアントの事実上の標準である地位は変わらず、巨大なユーザーベースが安定度の源泉です。
7位 Visual Basic 2.84% 小幅増
Visual Basicは+0.14ポイント。
業務アプリの保守運用と学習資源の蓄積が露出度を維持しています。
現行プロジェクトの延命と移行計画という二面の需要に支えられています。
8位 Go 2.32% 横ばい
Goは-0.03ポイントで横ばい。
クラウドネイティブとインフラ領域での堅調さが続き、シンプルな言語仕様と優れた並行処理が評価されています。
TIOBEでは露出度の大幅な変動は見られませんが、実務採用は底堅い印象です。
9位 Delphi/Object Pascal 2.26% 上昇基調
Delphiは+0.49ポイントで9位に浮上。
レガシー資産の継続運用と高速なネイティブUI開発のニーズに支えられ、特定業務領域での強さが表面化しています。
TIOBEの指標特性上、書籍やQ&Aの露出が効きやすい点も追い風です。
10位 Perl 2.03% 急上昇 トップ10復帰
Perlは27位→10位と急伸し、+1.33ポイントを記録しました。
TIOBEは技術的要因としてAmazonのPerl書籍点数などの寄与を示唆しており、実務採用の急増を直接意味するわけではない点に注意が必要です。
とはいえ、Perl 5の継続的な更新やCPANの厚み、Rakuへの分離定着が再評価に結びついた可能性があります。
まとめ
本稿の要点は3つです。
第一に、Pythonが25.98%で独走をさらに強化し、2位以下に大差をつけています。
第二に、Perlが指標要因を背景にトップ10へ復帰し、露出度の変化が順位に強く作用するTIOBEの特性が改めて示されました。
第三に、C++/C/Javaは横並びの安定圏にあり、DelphiやAdaの上昇、Rustの一服などニッチや新興の温度差が浮き彫りになりました。
最後に、TIOBEは「人気」や「露出度」を測る月次指標であり、言語自体の優劣や現場の生産性を直接評価するものではありません。
求人件数、GitHubリポジトリやパッケージの利用状況、学習トラフィック(PYPL)など他の実態指標と合わせて多面的に解釈することを強く推奨します。