Pythonのスクリプトファイル(.py)を自分で作成し、コマンドラインやエディタから実行できるようになると、学習や自動化が一気に進みます。
本記事では、WindowsとMacの両方でのインストール確認から、.pyファイルの作成、実行、つまずきやすいエラーの対処までを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
Pythonのインストール確認と準備(Windows/Mac・PATH設定)
Pythonを使い始める前に、OSごとのインストール状況を確認し、コマンドが通るように環境変数(PATH)を整えます。
WindowsでPythonをインストール/確認する方法
Windowsでは「python.org 公式インストーラ」または「Microsoft Store」から導入できます。
学習用途では公式インストーラがおすすめです。
インストール済みかはコマンドプロンプトまたはPowerShellで確認します。
1. バージョン確認
PowerShellを開き、次を入力します。
py
は「Python Launcher」で、複数バージョンが入っていても安定して見つかります。
# 推奨(Python Launcher)
py --version
# 直接 python を指すパスが通っていればこちらでも可
python --version
Python 3.12.4
2. 公式インストーラでのインストール
- https://www.python.org/downloads/windows/ から最新版をダウンロードします。
- セットアップ開始時に「Add Python 3.x to PATH」に必ずチェックを入れてから「Install Now」を選びます。
- 完了後、PowerShellで再度バージョンを確認します。
py --version
3. Microsoft Store版の注意
Microsoft Store版は「App Execution Aliases(アプリ実行エイリアス)」に影響を受けることがあります。
もし python
が意図せずストアアプリを起動してしまうときは、Windowsの「設定 > アプリ > アプリ実行エイリアス」で Python に関するエイリアスをオフにするか、py
コマンドを使うと安定します。
MacでPythonをインストール/確認する方法
macOSでは標準で最新のPython 3が入っていないことが多いため、Homebrewまたは公式インストーラで導入します。
以降は python3
を使うのが基本です。
1. バージョン確認
ターミナルを開き、次を入力します。
python3 --version
Python 3.12.4
2. Homebrewでのインストール
Homebrew未導入なら https://brew.sh/ の手順で導入後、次を実行します。
brew install python
# インストール後に念のため確認
python3 --version
Apple Silicon(M1/M2/M3)では Homebrew のパスが /opt/homebrew/bin になるため、パスが通っていない場合はシェル設定に追記します。
# 例: zsh の場合(~/.zshrc)
echo 'export PATH="/opt/homebrew/bin:$PATH"' >> ~/.zshrc
exec zsh
3. 公式インストーラでのインストール
https://www.python.org/downloads/macos/ からPKGを入手して実行し、インストール後に python3 --version
を確認します。
PATH設定のチェックと更新(python/pyコマンド)
コマンドが見つからない場合は PATH を確認し、必要に応じて更新します。
現在の場所を確認します。
where python
where py
echo %PATH%
PATHの修正は「コントロールパネル > システム > システムの詳細設定 > 環境変数」から「Path」に Python のインストール先(例: C:\Users<ユーザー名>\AppData\Local\Programs\Python\Python312\ とその Scripts)を追加します。
現在の場所を確認します。
which python3
echo $PATH
必要ならシェル設定(~/.zshrc など)に Homebrew のパスを追加します。
echo 'export PATH="/opt/homebrew/bin:/usr/local/bin:$PATH"' >> ~/.zshrc
exec zsh
Pythonスクリプト(.py)の基礎知識とファイル作成ポイント
スクリプトの基本ルールを押さえると、作成や実行で迷いにくくなります。
.py拡張子・UTF-8・ファイル名の注意点
Pythonスクリプトは拡張子を .py
にします。
Python 3の標準文字コードはUTF-8ですので、エディタの保存形式をUTF-8にしておくと日本語コメントも安全です。
ファイル名は英数字とハイフン/アンダースコアで付け、スペースや全角文字、先頭数字は避けるとトラブルが少なくなります。
標準モジュールと同名のファイルは避けましょう。
例えば以下は衝突の典型例です(同名だと import が誤動作することがあります)。
random.py
※標準モジュールに同名のものが存在string.py
※標準モジュールに同名のものが存在json.py
※標準モジュールに同名のものが存在test.py
(pytest などと混ざることも)async.py
やtyping.py
(組み込み/標準名との衝突)
シバン行(#!/usr/bin/env python3)と実行権限(macOS)
macOSやLinuxでは、スクリプト先頭に「シバン行」を書くと、ファイルを直接実行できます。
#!/usr/bin/env python3
あわせて実行権限を付けます。
chmod +x hello.py
注意点として、シバン行が有効に働くのは改行コードがLF(UNIX形式)のときです。
CRLFだと「bad interpreter」エラーになる場合があるため、macOSではLFで保存します。
サンプルコード:Hello World を保存する
最小のサンプルとして「Hello, Python!」を出力するファイルを作成します。
ファイル名は hello.py
とします。
#!/usr/bin/env python3
# hello.py
# これはコンソールにメッセージを出力する最小のPythonスクリプトです。
def main():
# 文字列を表示します
print("Hello, Python!")
if __name__ == "__main__":
main()
Hello, Python!
エディタでのスクリプト作成手順(VS Code・IDLE・メモ帳/テキストエディット)
お好みのエディタで .py
を作成します。
初学者は IDLE または VS Code が扱いやすいです。
VS Codeで.pyを作成する手順
- VS Code を起動し、Python 拡張機能(Microsoft製)をインストールします。
- フォルダを開く(任意)か、新規ファイルを作成して
hello.py
という名前で保存します。 - 右下の「文字コード」は UTF-8、改行コードは WindowsならCRLF、macOSならLFで問題ありません。macでシバン+直接実行する場合はLFを選びます。
- ステータスバーの「Python インタープリタ」をクリックして使用するバージョン(3.x)を選びます。
- 上記の
hello.py
のコードを貼り付けて保存します。
VS Codeでは「実行」メニューから「デバッグなしで実行」や、エディタ右上の再生ボタンが使えます(詳細は後述)。
IDLEで.pyを作成する手順
IDLEはPythonに同梱される軽量IDEです。
- IDLEを起動します(Windowsはスタートメニューから「IDLE (Python 3.x)」、Macはアプリケーション内のPythonフォルダにあります)。
- メニュー「File > New File」で新規エディタウィンドウを開きます。
- コードを貼り付けて、
File > Save
からhello.py
として保存します(UTF-8で保存されます)。 - 「Run > Run Module (F5)」で実行できます。結果はShellウィンドウに表示されます。
Windows:メモ帳(Notepad)で作成する手順
最近のメモ帳はデフォルトがUTF-8なので、そのまま保存すれば大丈夫です。
- メモ帳を開き、コードを貼り付けます。
- 「ファイル > 名前を付けて保存」で「ファイルの種類」を「すべてのファイル」にし、
hello.py
として保存します。 - 文字コードは「UTF-8」を選びます。
- Windowsでのみ使うなら改行コードはCRLFのままで構いません。
macOSで直接実行する可能性があるファイルをWindowsで作る場合は、VS Code等でLFに変更すると安全です。
Mac:テキストエディットで作成する手順
テキストエディットはデフォルトがリッチテキストのため、プレーンテキストへ切り替えます。
- テキストエディットを起動し、「新規書類」を開きます。
- 「フォーマット > 標準テキストにする」を選び、プレーンテキストへ変更します。
- コードを貼り付け、「ファイル > 保存」で
hello.py
として保存します。保存時の「標準テキストのエンコーディング」はUTF-8を選びます。 - シバン行を使って直接実行する場合は、改行コードがLFであることを確認します(VS Codeで開いて確認/変更すると確実です)。
コマンドラインでのPythonスクリプト実行方法
作成した .py
をコマンドラインから実行します。
ディレクトリ移動は cd
を使います。
Windows(コマンドプロンプト/PowerShell):python/pyコマンドで実行
PowerShellでスクリプトのあるフォルダへ移動して実行します。
# フォルダへ移動
cd C:\Users\<ユーザー名>\Documents\python-scripts
# Python Launcher 経由(推奨)
py hello.py
# または python コマンドで
python hello.py
Hello, Python!
複数バージョンがある場合は、py -3.12 hello.py
のようにメジャー/マイナーを指定できます。
Mac(ターミナル):python3コマンドと実行権限で実行
ターミナルでスクリプトのあるディレクトリへ移動し、python3
で実行します。
cd ~/projects/python-scripts
# 1) 通常実行
python3 hello.py
# 2) シバン行 + 実行権限で直接実行
chmod +x hello.py
./hello.py
Hello, Python!
VS Codeからの実行(ターミナル/実行ボタン)
VS Codeでは、エディタ右上の再生ボタン「Run Python File」や「ターミナル > 新しいターミナル」から直接実行できます。
# VS Codeの統合ターミナルで
python hello.py # Windows では py hello.py も可
python3 hello.py # macOS
デバッグ(ブレークポイント)したい場合は「実行とデバッグ」ビューから構成を作成します。
よくあるエラーと解決策(’python’が見つからない・Permission denied など)
環境構築直後は、コマンドの認識や権限、改行・文字コードでつまずきがちです。
代表的な症状と対処をまとめます。
‘python’ または ‘py’ が認識されないとき(PATH設定)
エラーメッセージの例:
'python' は、内部コマンドまたは外部コマンド...
python: command not found
zsh: command not found: python3
対処の要点は次の通りです。
- Windows:
py --version
が通るか確認します。通るならpy
を使うのが早道です。where python
で場所が出ない場合、環境変数 Path に Python のインストール先が入っていません。インストーラで「Add Python to PATH」を付け直すか、環境変数に手動追加します。- Microsoft Store 経由の干渉を避けるには「アプリ実行エイリアス」で Python をオフにするか、
py
を使用します。
- macOS:
which python3
が空なら未インストールか PATH 未設定です。Homebrew/公式からPython 3を入れ、必要に応じてexport PATH="/opt/homebrew/bin:$PATH"
を .zshrc 等に追記します。
Permission denied/実行権限エラー(macOS)
Pythonスクリプトの実行には、実行権限が必要です。付与されていないと権限不足で実行できません。
zsh: permission denied: ./hello.py
# 実行権限を付与
chmod +x hello.py
# 直接実行にこだわらない場合は python3 で呼び出せば権限は不要
python3 hello.py
ダウンロードしたスクリプトで「… because the developer cannot be verified」や Operation not permitted
の場合は、信頼できるソースか確認のうえで属性削除が必要になることがあります。
# ダウンロード属性の削除(必要な場合のみ)
xattr -d com.apple.quarantine ./script.py
文字コード・改行コードの問題(UTF-8/CRLF)
症状の例
- シバン行を使って直接実行したら「bad interpreter: /usr/bin/env: No such file or directory」と出る。
- 日本語コメントで文字化けやSyntaxErrorが出る。
原因と対処
- macOSでCRLF(Windows改行)だとシバン行の末尾に余計なCRが入り、上記エラーを引き起こします。エディタで改行コードをLFに変更して保存します。
dos2unix hello.py
でも変換できます。 - 文字コードはUTF-8にします。VS Code なら右下の文字コード表示からUTF-8で再保存できます。Notepadでも「UTF-8」を選択して保存します。
- Python 3では基本UTF-8のため、
# -*- coding: utf-8 -*-
は不要ですが、混在環境で明示したい場合は先頭付近に記載しても構いません。
まとめと次のステップ
ここまでで、Windows/Macのインストール確認、.pyファイルの作成、コマンドラインやエディタからの実行、典型的なエラー対処までひと通り身につきました。
次は仮想環境とパッケージ管理に触れて、再現性の高い開発環境を作っていきましょう。
venvで仮想環境を作成して実行する
プロジェクトごとに依存関係を分離するには venv
を使います。
以下は最小手順です。
# プロジェクトフォルダへ
mkdir myproj && cd myproj
# 仮想環境を作成(Windows/Mac共通)
python -m venv .venv # macOSでは python3 -m venv .venv でも可
# 有効化
# Windows(PowerShell)
.\.venv\Scripts\Activate.ps1
# Windows(コマンドプロンプト)
.\.venv\Scripts\activate.bat
# macOS / Linux(zsh/bash)
source .venv/bin/activate
# 確認:仮想環境の python が使われているか
python --version
(.venv) C:\path\to\myproj> python --version
Python 3.12.4
仮想環境は ( .venv )
のようにプロンプトに表示され、deactivate
で抜けられます。
pipでパッケージをインストールしてスクリプトを動かす
外部ライブラリは pip
で導入します。
仮想環境を有効化した状態で実行します。
# ライブラリのインストール(例:requests)
python -m pip install requests
簡単なHTTPアクセスのサンプルを作成して実行します。
fetch.py
を作って保存します。
#!/usr/bin/env python3
# fetch.py
# requests を使ってWebページのステータスコードを表示します。
import sys
import requests
def main():
url = sys.argv[1] if len(sys.argv) > 1 else "https://example.net"
r = requests.get(url, timeout=10)
print(f"URL: {url}")
print(f"Status: {r.status_code}")
# 先頭100文字だけ表示
print("Body head:", r.text[:100].replace("\n", " ") + "...")
if __name__ == "__main__":
main()
python fetch.py https://example.com
URL: https://example.com
Status: 200
Body head: <!doctype html> <html> <head> <title>Example Domain</title> ...
依存関係は pip freeze > requirements.txt
で固定化し、別環境では pip install -r requirements.txt
で再現できます。
まとめ
Pythonスクリプト(.py)は、UTF-8で保存し、適切なファイル名を付け、Windowsなら py
/python
、Macなら python3
で実行するのが基本です。
macOSで直接実行したい場合はシバン行と実行権限、LF改行を意識するとスムーズです。
エラーは PATH、権限、改行・文字コードに集約されることが多く、原因ごとの対処を覚えておくと解決が早まります。
次のステップとして venv
による仮想環境と pip
によるパッケージ管理を取り入れると、学習から小規模開発、業務の自動化まで安定した運用が可能になります。