プログラミングスクールは数十万円から高いものでは100万円近くする高額な自己投資です。
「エンジニアになって人生を変えたい」という強い思いで入会したものの、実際に受講してみると「想像していた内容と違った」「講師の質が低すぎる」「転職保証といっていたのに紹介がない」といった理由で解約や返金を検討するケースは少なくありません。
しかし、スクール側がすんなりと返金に応じてくれない場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
法律の知識がないまま交渉すると、本来戻ってくるはずのお金が戻ってこないという最悪の事態にもなりかねません。
この記事では、プログラミングスクールの返金トラブルに直面している方に向けて、全額返金のための条件やクーリング・オフの適用範囲、具体的な交渉手順を徹底的に解説します。
泣き寝入りする前に、まずは正しい知識を身につけましょう。
プログラミングスクールで多発する返金トラブルの事例
まずは、具体的にどのような状況で返金トラブルが発生しているのかを整理します。
ご自身の状況がこれらに当てはまるか確認してみてください。
多くのトラブルは、事前の期待値と実際のサービス内容の乖離から生じています。

プログラミングスクールの受講契約において、利用者と運営側の間で認識のズレが生じやすいポイントは以下の通りです。
「転職保証」に関するトラブル
最も多いのが、「転職できなかったら全額返金」という転職保証制度にまつわるトラブルです。
広告では「未経験から100%転職!」と謳っていても、契約書の細かい条項(免責事項)には厳しい条件が書かれていることがあります。
例えば、「スクールが紹介する企業に応募しなければならない(希望しない企業でも)」「期間内に◯◯件以上応募しなければ対象外」といった条件を満たしていないとして、返金を拒否されるケースが後を絶ちません。
質の低いカリキュラムや講師の対応
「現役エンジニアが指導」と聞いていたのに、実際は実務経験の浅いアルバイトが対応していたり、カリキュラムの内容がインターネット上の無料教材と変わらないレベルだったりする場合です。
「債務不履行(契約したサービスが提供されていない)」として解約を申し出ても、スクール側は「サービスは提供している」と主張し、話し合いが平行線になることがあります。
途中解約における違約金
受講期間の途中で辞めたいと申し出た際、法外な違約金や解約手数料を請求されるケースです。
すでに支払った受講料が一切返金されないだけでなく、追加で支払いを求められることもあり、トラブルに発展します。
全額返金が可能になる「クーリング・オフ」の条件
契約直後であれば、理由を問わず無条件で契約を解除できる「クーリング・オフ」制度が利用できる可能性があります。
ただし、すべてのプログラミングスクールで適用されるわけではないため、法的な要件を正しく理解する必要があります。

特定継続的役務提供に該当するか
プログラミングスクールがクーリング・オフの対象となる特定継続的役務提供(パソコン教室等)に該当するためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 契約期間が2ヶ月を超えていること
- 支払い総額が5万円を超えていること
短期集中型の1ヶ月コースなどの場合は、この法律の対象外となる可能性があるため注意が必要です。
また、完全に「通信販売(通信教育)」として扱われる場合、クーリング・オフ制度自体が適用されないことがあります。
しかし、オンライン完結型であっても、講師による指導や進捗管理が含まれる場合は「パソコン教室」として特定継続的役務提供とみなされるケースが増えています。
契約書面受領日から8日以内であるか
クーリング・オフが可能な期間は、法定書面(契約書)を受け取った日から8日以内です。
この期間内であれば、スクール側の合意がなくても、一方的に契約解除を通知することで全額返金を受けることができます。
もし、スクール側が「うちはクーリング・オフできない」と嘘の説明をして妨害した場合は、8日を過ぎていてもクーリング・オフが可能です。
クーリング・オフ期間経過後の「中途解約」
8日間を過ぎてしまった場合でも、諦める必要はありません。
将来に向かって契約を解除する「中途解約」という手段があります。
特定継続的役務提供に該当するプログラミングスクールであれば、法律で定められた上限を超える違約金は無効となります。

受講開始前の中途解約
契約締結後、クーリング・オフ期間は過ぎているものの、まだレッスンを受けていない(受講開始前)場合の解約手数料の上限は1万5,000円と法律で定められています。
スクールの規約に「解約金10万円」と書かれていても、法律が優先されるため、1万5,000円を超える部分は支払う必要がありません。
受講開始後の中途解約
すでに受講を開始している場合の解約については、以下の計算式で精算を行います。
返金額 = 支払い総額 -(すでに受けたサービスの対価 + 解約損料)
ここで請求できる解約損料(違約金)の上限は、以下の低いほうの金額になります。
- 5万円
- 契約残額の20%
もし、スクール側が「いかなる場合も返金しない」と主張しても、特定継続的役務提供に該当する場合は、この法律に基づいて返金を求めることができます。
消費者契約法による契約の取り消し
クーリング・オフ期間が過ぎており、かつ中途解約の規定でも納得がいかない場合、消費者契約法に基づき契約自体の取り消しを主張できるケースがあります。
不実告知(嘘の説明)
契約の勧誘時に、重要事項について事実と異なることを告げられた場合です。
- 「誰でも1ヶ月でフリーランスになれる」と断定的な説明を受けた。
- 「必ず就職先を紹介する」と言われたのに紹介がなかった。
断定的判断の提供
将来の不確実なことについて「絶対に儲かる」「確実に年収が上がる」といった断定的な説明を受けて契約した場合、契約を取り消して全額返金を求めることができます。
返金を成功させるための具体的な手順
ここでは、実際に返金を請求するためのアクションプランをステップ形式で解説します。
感情的にならず、証拠を揃えて論理的に進めることが重要です。

手順1:証拠を集める
言った言わないの水掛け論を防ぐため、勧誘時のやり取りや、現在の状況を示す証拠を集めます。
- 勧誘時のメールやLINEの履歴
- Webサイトの広告ページ(スクリーンショット)
- 担当者との会話の録音データ
- 受講履歴やシステムのエラーログ(サービスの質に問題がある場合)
特に広告ページは、後から書き換えられる可能性があるため、早急にスクリーンショットやPDFで保存しておきましょう。
手順2:書面で解約通知を送る(内容証明郵便)
電話やメールでの解約申し出は、「聞いていない」としらを切られるリスクがあります。
必ず証拠が残る内容証明郵便を利用しましょう。
内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれるサービスです。
通知書の文面例(クーリング・オフの場合)
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| タイトル | 通知書 |
| 契約年月日 | 令和〇年〇月〇日 |
| 商品名 | プログラミングスクール受講契約(〇〇コース) |
| 契約金額 | 金 〇〇〇,〇〇〇円 |
| 販売会社名 | 株式会社〇〇 |
| 担当者名 | 〇〇 〇〇 殿 |
| 本文 | 上記契約について、特定商取引法に基づき契約を解除(クーリング・オフ)します。つきましては、支払済みの代金〇〇円を下記口座に返金してください。 (振込先口座情報を記載) |
| 日付 | 令和〇年〇月〇日 |
| 差出人 | 住所・氏名・印 |
手順3:国民生活センター・消費生活センターに相談する
自力での交渉が難航した場合や、スクール側が応じない場合は、公的な相談機関である国民生活センターや消費生活センターに相談しましょう。
局番なしの「188(いやや)」に電話をかけると、最寄りの相談窓口を案内してくれます。
専門の相談員が、契約内容を確認し、法的な観点からアドバイスをくれたり、場合によってはスクール側との間に入って交渉(あっせん)を行ってくれることもあります。
手順4:決済代行会社やクレジット会社への連絡
クレジットカードで分割払いやリボ払いをしている場合、クレジット会社に「支払い停止の抗弁」を申し出ることで、引き落としを一時的にストップできる可能性があります。
スクールと揉めていることを伝え、所定の手続きを行ってください。
スクール側の反論への対処法(FAQ)
返金交渉をする際、スクール側からよくある反論と、それに対する切り返し方をまとめました。

- 「利用規約に『いかなる場合も返金不可』と書いてある」と言われたら?
消費者契約法により、その条項は無効の可能性が高いです。
事業者の損害賠償責任を全面的に免除する条項や、消費者の利益を一方的に害する条項は、法律で無効とされています。
規約よりも法律が優先されますので、諦めずに交渉しましょう。
- 「入学金は返金対象外」と言われたら?
特定継続的役務提供の場合、入学金も初期費用として規制の対象です。
初期費用(入学金)を含めた総額が計算の対象となります。
ただし、クーリング・オフ期間経過後の中途解約の場合、初期費用の扱いは契約ごとの詳細な計算が必要になるため、消費生活センターに計算を依頼することをおすすめします。
- 「もうテキストを閲覧したからデジタルコンテンツ代は請求する」と言われたら?
不当に高額な場合は争う余地があります。
一部のスクールでは、受講料とは別に「教材費」として高額な金額を設定し、返金を減らそうとすることがあります。
しかし、通常の市場価格とかけ離れた金額(例:PDF数枚で10万円など)であれば、その妥当性を問うことができます。
今後のトラブルを防ぐためのポイント
これからプログラミングスクールを検討している、あるいは再チャレンジを考えている方は、同じ失敗を繰り返さないために以下の点に注意してください。
- 「必ず稼げる」「転職保証」という甘い言葉を鵜呑みにしない。
- 契約前に必ず「利用規約」と「契約書」の解約条項を熟読する。
- 「特定継続的役務提供」に該当するかどうかを確認する。
- 口コミサイトだけでなく、SNSなどで実際の受講生の声をリアルタイム検索する。
まとめ
プログラミングスクールの返金トラブルは、決して他人事ではありません。
しかし、万が一トラブルに巻き込まれても、法律の知識と正しい手順を知っていれば、全額返金や適切な解約処理を勝ち取れる可能性は十分にあります。
今回の記事の重要ポイントを振り返りましょう。
- まずはクーリング・オフ(8日以内)が可能か確認する契約期間2ヶ月超、総額5万円超であれば適用の可能性大です。
- クーリング・オフ期間後でも「中途解約」は権利として認められている法外な違約金は支払う必要がありません。
- 嘘の説明や強引な勧誘があった場合は「契約の取り消し」を主張する消費者契約法があなたの味方になります。
- 交渉は必ず「証拠」を残し、「書面」で行う電話だけで済ませようとせず、内容証明郵便などを活用してください。
- 困ったらすぐに「188」へ電話する一人で悩まず、専門家である消費生活センターの力を借りましょう。
高い授業料は、あなたの将来のための大切な資金です。
不当な扱いに泣き寝入りすることなく、毅然とした態度で権利を主張してください。
この記事が、あなたの問題解決の一助となることを願っています。
