プログラミングスクールのWebサイトや広告を見ると「就職率100%」「転職成功率98%」といった華やかな数字が並んでいます。
しかし、その数字をそのまま信じてよいのか、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、就職率のカラクリや、数字の裏側にある前提条件、そして受講前に必ずチェックすべきポイントを、できるだけ具体的に解説します。
プログラミングスクール選びで後悔しないための判断軸を、一緒に整理していきましょう。
プログラミングスクールの「就職率100%」は本当か
結論から言うと、多くの場合「就職率100%」という表現は、事実の一部だけを切り取った数字です。
完全なウソとは言えない一方で、そのまま受け取ると誤解を招きやすい表現であることは間違いありません。
「就職率」の定義がバラバラで比較できない
プログラミングスクールごとに、就職率の定義は大きく異なります。
ここを理解せずに数字だけで比較すると、現実とのギャップが生まれやすくなります。
たとえば、あるスクールでは「就職率」を次のように定義していることがあります。
- 卒業後○ヶ月以内に、希望した人のうち就職・転職できた人の割合
- 特定の条件(年齢・地域・職歴など)を満たす人だけを対象にした割合
- 自社やグループ会社への就職も含めた割合
一方、別のスクールでは、
- 就職支援を受けた人のうち、何らかの形で就業した人の割合
- アルバイト・派遣・インターンなども含めた割合
のように、対象者やカウント方法がまるで違う場合があります。
つまり「就職率100%」という数字は、前提条件を確認しない限り、他スクールと比較できる指標にはなりません。

このように図で整理すると、同じ「100%」でも意味がまったく異なることが視覚的に理解しやすくなります。
「希望者のみ」が分母になっているケース
広告でよく見かけるのが「就職率100%(※就職希望者のみ)」という表現です。
この場合、スクール側が次のような条件を設けていることがあります。
- 就職サポートを利用した人だけを分母にしている
- 途中退会者や自主的に就職活動をやめた人はカウントしていない
- そもそも就職支援の対象外とされた人は最初から統計に含めていない
たとえば、受講生100人のうち、就職希望者が50人、残り50人は「フリーランス希望」「独学に切り替え」「途中退会」だったとします。
このとき、50人全員が就職できれば「就職率100%」と表記できますが、実態としては「受講生全体のうち50%が就職できた」に過ぎません。
広告の数字を見るときは、「分母は誰なのか?」を常に意識することが重要です。
よくある「就職率」のカラクリ
ここからは、プログラミングスクールの就職率に関する、代表的な「カラクリ」をもう少し具体的に見ていきます。
1. 条件付きの「転職保証」で就職率を高く見せる
「転職保証」「就職できなければ全額返金」といった制度は魅力的に見えますが、多くの場合細かい条件が設定されています。
代表的な条件としては、次のようなものがあります。
- 年齢制限(例: 30歳以下のみ対象)
- 一定地域への就職のみ対象(例: 首都圏・関西圏限定)
- 受講中・卒業後の行動に関する条件(例: 指定された応募数をこなす、課題を期限内に提出する)
- 早期離職は対象外(例: 入社後○ヶ月以内に自己都合退職した場合は保証適用外)
条件を満たさなかった人は、そもそも「保証の対象外」として扱われ、就職率の統計からも除外されるケースがあります。
その結果、「保証対象者だけ見れば就職率100%」という数字が作られてしまうのです。

2. 雇用形態を問わない「就業率」
就職率の中には、正社員以外の雇用形態を含めてカウントしているケースもあります。
たとえば次のようなパターンです。
- 派遣社員
- 契約社員
- アルバイト
- インターン
- 短期の業務委託
本人は「エンジニアとしての正社員就職」をイメージしていても、実際には「IT企業での派遣スタッフ」などが含まれている可能性があります。
これ自体が悪いとは言えませんが、期待していたキャリアとのギャップが生まれやすいため、事前の確認が欠かせません。
よくあるのが、説明会やカウンセリングでは正社員就職の事例が強調される一方で、数字の中にはそれ以外も含まれているパターンです。
「正社員としての就職率」と「何らかの形で就業した割合」を明確に分けているかどうかは、信頼できるスクールを見分ける重要なポイントです。
3. 自社案件・グループ会社への就職を含める
就職支援をしている企業の中には、自社やグループ会社がIT企業・SES企業であるケースもあります。
その場合、次のような構図になりがちです。
- スクールの卒業生を、自社(またはグループ会社)の社員や契約スタッフとして採用する
- その人数を就職実績としてカウントする
- 結果的に「就職率が高く見える」状態になる
もちろん、自社での受け入れが悪いこととは限りません。
未経験から実務に入る足がかりとして有効なケースも多くあります。
しかし、「就職先の選択肢が広い」と思っていたら、実際には自社案件への誘導が中心だったというギャップに戸惑う人もいます。
就職先を選ぶ自由度や、案件の内容、エンジニアとしてのスキルアップ環境など、自分が重視する条件と合っているかを確認しておく必要があります。
「嘘」に感じやすいポイントと、スクール側の事情
ここまで読むと、「プログラミングスクールは嘘ばかり言っている」と感じるかもしれません。
しかし、現場の事情を踏まえると、完全な悪意だけで数字を作っているとは限りません。
スクール側にも「伝え方」の難しさがある
スクールとしては、実績を数字で表さなければ、他社との比較が難しくなります。
そのため、ある程度シンプルな指標として「就職率」「転職成功率」といった表現を使わざるを得ない面があります。
一方で、すべての前提条件を広告スペースに書き切ることは難しく、結果として「誤解を招きやすい数字」だけが独り歩きしてしまうことも事実です。
もちろん、意図的に都合の悪い情報を隠しているケースもあります。
その見極めのためには、公開情報だけでなく、無料カウンセリングや個別相談でのリアルなやり取りが重要になります。
受講生側も「過度な期待」を抱きやすい
もう一つの側面として、受講生側の「期待値」が高くなりすぎていることも挙げられます。
たとえば次のようなイメージを持っていると、現実とのギャップが大きく感じられます。
- スクールに通えば、誰でも短期間でエンジニアとして正社員になれる
- スキルレベルに関わらず、高収入・リモートワークの求人が手に入る
- 履歴書や面接対策をしてもらえば、自動的に内定が出る
プログラミングスクールはあくまで「学習とサポートの場」であり、「内定を保証してくれる場所」ではありません。
スクールのサポートと、自分自身の努力が両輪になって初めて、就職・転職の成功確率が高まります。
就職率の数字を見るときのチェックポイント
では、実際にプログラミングスクールを検討する際、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
就職率の数字とあわせて、必ず確認したいポイントを整理します。
1. 分母と分子の中身を質問する
数字を見たら、まずは「誰が分母になっているのか」「何をもって就職とカウントしているのか」を確認しましょう。
具体的には、次のような質問が有効です。
- 就職率の「分母」は、受講生全体ですか? 就職希望者のみですか?
- 途中退会した人や、就職活動をしなかった人はどう扱っていますか?
- 正社員以外(契約・派遣・アルバイトなど)も就職に含まれていますか?
- 自社やグループ会社への就職は、全体の何割くらいですか?

こうした質問に対して、具体的な数字や内訳をきちんと答えてくれるスクールは、比較的透明性が高いと言えます。
逆に、言葉を濁したり、「詳しい数字は公開していません」といった対応が続く場合は注意が必要です。
2. 「年齢」「地域」「職歴」などの条件を確認する
就職支援や転職保証には、年齢や地域、これまでの職歴などに関する条件が設定されていることが多くあります。
特に、次のようなケースでは影響が大きくなります。
- 30代後半以降での未経験転職
- 地方在住で、首都圏に出る予定がない
- 職歴にブランクがある、または非正規雇用が長い
自分が「統計の中で少数派になる条件」を持っていないか、一度立ち止まって確認してみることが大切です。
もし該当しそうな場合は、実際に同じような条件の人がどのくらい就職できているのか、事例を見せてもらうとよいでしょう。
3. 「どこに」就職しているのかを見る
就職率の数字だけでなく、「どのような企業に就職しているのか」も非常に重要です。
確認したいポイントとしては、以下のようなものがあります。
- Web系自社開発企業なのか、受託開発なのか、SESなのか
- 企業規模(ベンチャー企業か、大手企業か)
- 業界分野(自社サービス、SIer、SESなど)
- 未経験での入社後に、どのような教育・研修があるか
同じ「エンジニア就職」でも、企業や案件の形態によって、日々の働き方やスキルの伸び方は大きく変わります。
可能であれば、卒業生インタビューやOB・OG訪問などを通じて、実際の働き方をイメージしておくと、ミスマッチを防ぎやすくなります。
「失敗しない」プログラミングスクールの選び方
ここからは、就職率の数字だけに振り回されず、自分に合ったプログラミングスクールを選ぶための視点を紹介します。
自分の「ゴール」を先に明確にする
スクール選びで最も重要なのは、「卒業後にどうなっていたいか」というゴールを明確にすることです。
たとえば、次のようなイメージを言語化してみてください。
- どの職種になりたいか(例: Webエンジニア、フロントエンド、バックエンド、インフラなど)
- どのような働き方をしたいか(例: 正社員、フリーランス、リモートワークなど)
- どの地域で働きたいか(例: 首都圏、地方、海外など)
- どのくらいの年収・勤務条件を目指したいか
このゴールがある程度固まれば、「就職率が高いスクール」ではなく、「自分のゴールに近づきやすいスクール」を選びやすくなります。
カリキュラムと学習サポートを重視する
就職率の数字以上に重要なのが、「何を、どのように学べるか」です。
チェックしたいポイントには、次のようなものがあります。
- 現場で使われている技術スタックに近いか(PHPやJavaだけでなく、JavaScriptフレームワークやクラウド技術などにも触れられるか)
- 自分で考えてコードを書く機会がどのくらいあるか
- チーム開発やコードレビューの機会があるか
- 質問対応の体制(質問しやすさ、回答スピード、質)はどうか
エンジニアとしての市場価値は、最終的には「どのくらい自走できるか」で決まります。
就職サポートだけでなく、「自分で学び続ける力が身につくカリキュラムかどうか」も重要な判断基準です。
卒業生のリアルな声を確認する
公式サイトの「受講生の声」は、基本的にポジティブな事例が中心です。
よりリアルな情報を得るためには、次のような方法も検討してみてください。
- SNS(X、noteなど)でスクール名を検索し、卒業生の発信を読む
- オンラインコミュニティや掲示板で評判を確認する
- 可能であれば、卒業生と直接話す機会をつくる
1つや2つのネガティブな意見だけで判断する必要はありませんが、「同じような不満が何度も出てくるスクール」は慎重に見極めたほうが安心です。
まとめ
プログラミングスクールの「就職率100%」「転職成功率◯◯%」という数字は、一見すると非常に魅力的です。
しかし、その多くは「就職希望者のみ」「特定条件を満たした人のみ」「雇用形態を問わない」など、前提条件つきの数字であることが少なくありません。
数字そのものがウソとは限りませんが、分母や定義が不明瞭なままでは、現実とのギャップを生み、「騙された」「嘘だと感じた」という不満につながってしまいます。
スクールを検討する際は、次のポイントを意識してみてください。
- 就職率の分母・分子の中身(誰を数え、何を就職とみなしているか)を確認する
- 年齢・地域・職歴などの条件と、自分の状況が合っているかを確認する
- 就職先の企業の種類や働き方まで含めてイメージする
- 数字だけでなく、カリキュラムや学習サポート、卒業生の声を重視する
- 自分自身のゴールを明確にし、それに合うスクールかどうかで判断する
プログラミングスクールは、正しく選び、主体的に活用すれば、エンジニアとしてのキャリアを切り開く強力なきっかけになります。
就職率という一つの指標に頼り過ぎず、数字の裏側を冷静に読み解きながら、自分にとって最適な一歩を選んでいきましょう。
