ITエンジニアやプログラマーを目指して技術書を手に取ったものの、途中で挫折してしまう人は少なくありません。
ページ数の多さや専門用語の多さに圧倒され、「自分には向いていないのでは」と感じてしまうこともあります。
しかし、技術書は読み方と選び方のコツを押さえれば、初心者でも着実に読み進められるようになります。
この記事では、これから技術書を読み始める方に向けて、挫折しにくい読み方と本の選び方を具体的に解説していきます。
技術書で挫折しやすい理由を知る
まずは、なぜ初心者が技術書で挫折しやすいのかを理解しておくことが大切です。
原因を知っておくことで、自分に合った読み方を選びやすくなります。
難易度と前提知識のギャップ
多くの技術書は、読者にある程度の前提知識があることを前提に書かれています。
例えば、プログラミング入門書に見えても、実際には次のような知識が暗黙のうちに求められていることがあります。
- 変数や関数といった基本的な概念
- コマンドラインの最低限の使い方
- エディタや開発環境の用語
このように本が想定している読者像と自分のレベルが合っていないと、「なぜここが説明されていないのだろう」と感じて混乱し、読み進めるのが苦痛になってしまいます。
最初から最後まで「完読」しようとする
初心者ほど真面目に最初から最後まで読もうとしてしまいます。
もちろん悪いことではありませんが、技術書は小説と違い、必要な章だけ読んでも十分役立つ構成になっているものが多いです。
にもかかわらず、理解が追いつかない章で立ち止まり続けてしまうと、全体が進まず挫折の原因になってしまいます。
手を動かさずに読むだけで終わってしまう
技術書の多くは、サンプルコードや演習を通じて理解を深める構成になっています。
しかし、読むだけで満足してしまい実際に手を動かさないと、「読んだつもり」にはなれても知識が定着しません。
その結果、数日後には内容をほとんど忘れてしまい、「やっぱり自分には無理かもしれない」と感じてしまいます。
初心者に向いた技術書の選び方
挫折しないための第一歩は、自分のレベルに合った本を選ぶことです。
ここでは、初心者が技術書を選ぶときに見るべきポイントを整理します。

自分の目的とゴールをはっきりさせる
最初に考えるべきなのは、「なぜこの本を読むのか」という目的です。
例えば次のように、できるだけ具体的に言語化してみてください。
- Webサイトを自分で1つ公開できるようになりたい
- Pythonで簡単な自動化ツールを作れるようになりたい
- ITエンジニア転職に必要な基礎用語を理解したい
このように本を読み終えたときに、自分がどうなっていたいかを決めておくと、本の内容がそのゴールにどれくらい近いのか判断しやすくなります。
タイトルとサブタイトルの「言葉選び」を見る
本のタイトルには、その本の対象読者がある程度表れています。
次のようなキーワードは、比較的初心者向けであることが多いです。
入門はじめての超初心者図解やさしい
一方、次のようなキーワードが含まれている場合は、初心者にとって難易度が高い可能性があります。
完全制覇大全実践現場上級
もちろん例外はありますが、迷ったときは「入門」「はじめての」のようなキーワードがある本から選ぶと、大きく外す可能性は下がります。
目次と「最初の30ページ」でレベルを確認する
可能であれば、本を買う前に必ず目次と冒頭部分を確認しましょう。
オンライン書店でも「試し読み」ができる場合があります。
見るべきポイントは次の通りです。
- 目次
- 章立てがステップを踏んでいるか(基礎 → 応用 → 実例のような流れになっているか)
- 専門用語だけが並んでいないか
- はじめに / 序章
- 読者像が「プログラミング初心者」「これから学ぶ人」と明記されているか
- 最初の30ページ
- 説明の前にいきなりコードだけが大量に出てこないか
- 図やイラストが適度に入っているか
- 1ページあたりの文字密度が高すぎないか
最初の30ページを読んで「なんとなく言っていることはわかる」くらいであれば、その本は今の自分に合っている可能性が高いです。
逆に、ほとんどの行が理解できない場合は、もう少しレベルを落とすか、より入門寄りの本を検討してみてください。
挫折しにくい技術書の読み方の基本
次に、具体的な読み方のコツを見ていきます。
ここでは、初心者でも実践しやすい「挫折しにくい読み方」をステップごとに紹介します。

ステップ1: 最初に全体像をざっくりつかむ
いきなり1ページ目から細かく読み込むのではなく、まずは本全体の「地図」を頭に入れることが大切です。
具体的には、次のような流れでざっと眺めてみてください。
- 目次を読んで、どんなテーマがどの順番で扱われているかを確認する
- 各章の最初と最後のページだけをパラパラと眺める
- サンプルコードや図解がどの程度あるかを見ておく
この段階では、内容を理解しようとしなくてかまいません。
「この本は最初に基礎を説明して、そのあとWebアプリを作る流れになっている」など、全体のストーリーがぼんやりと分かれば十分です。
ステップ2: 細かい理解より「ざっと通して読む」
次のステップでは、細部にこだわらずに1周通して読み切ることを目標にします。
このときのポイントは、分からないところが出てきても立ち止まりすぎないことです。
読みながら、次のように自分の中で線引きをしておくとスムーズです。
- 「なんとなく言っていることは分かる」 → そのまま先に進む
- 「まったくイメージが湧かない」 → 付箋やマーカーで印だけ付けて進む
1周目は、専門用語を正確に覚えることよりも、「こういう道具があって、だいたいこういう場面で使うらしい」というレベルで把握できれば十分です。
ステップ3: 手を動かしながら2周目を読む
1周目で全体像がつかめたら、2周目は手を動かしながら読み進めるようにします。
具体的には、次のような読み方がおすすめです。
- サンプルコードは必ず自分で入力して実行してみる
- 本の通りに動かしてもエラーが出たら、エラー内容を自分で調べてみる
- 章末の演習問題があれば、1問でもよいので取り組んでみる
ここで大切なのは、完璧を目指さないことです。
すべてのコードを理解する必要はありません。
まずは「本に書いてある通りに動かせた」という成功体験を積み重ねることで、技術書を読むことへの抵抗感が減っていきます。
「全部読まない」前提で読み進める
初心者が挫折しないためには、あえて「この本は最初から最後まで読まなくてもよい」と割り切ることも重要です。
目的と関係の薄い章は飛ばしてよい
例えば、今の目的が「簡単なWebアプリを1つ作ること」であれば、次のような章は一度飛ばしても構いません。
- 高度なパフォーマンスチューニング
- 大規模開発における設計パターン
- セキュリティの網羅的な解説
これらはもちろん重要なテーマですが、最初の1冊目ではなく、2冊目以降でじっくり学べばよい内容です。
最初からすべてを理解しようとすると、情報量に圧倒されてしまいます。
「今使う知識」から優先的に読む
技術書の内容は、実際に手を動かしているときに読むと理解が進みやすくなります。
例えば、次のような順番を意識してみてください。
- まず小さなサンプルを動かしてみる
- そのサンプルで使われている文法やライブラリの章を読む
- わからないところだけ、該当するページを辞書のように引く
このように、「必要になったときに、必要なところだけ読む」という辞書的な使い方をすることで、無駄な情報に圧倒されずに済みます。
挫折しないための読み進め方の工夫
読み方の方針が決まったら、日々の読み進め方にも工夫を加えることで、継続しやすくなります。

「毎日少しずつ読む」を習慣にする
技術書はまとまった時間がないと読めないと思われがちですが、1日15〜30分でも十分に進めることができます。
重要なのは、週末に一気に読むのではなく、少しずつでも毎日触れることです。
読む時間帯をあらかじめ決めておくと、習慣化しやすくなります。
- 通勤・通学の電車の中
- 朝起きてからの15分
- 寝る前の30分
「毎日絶対に1章読む」のような高い目標ではなく、「毎日必ず数ページは開く」という低めの目標から始めるのがおすすめです。
1回の読書での「ゴール」を小さく設定する
技術書はボリュームが多いため、あいまいな目標で読み始めると途中で集中力が切れてしまいます。
そこで、1回の読書ごとに小さなゴールを設定すると、達成感を得やすくなります。
例えば、次のような設定が考えられます。
- 今日は「変数と型」のセクションだけ読む
- 今日はサンプルコードを1つだけ動かす
- 今日はわからない単語を3つだけ調べる
このように、「ここまでできたら今日の自分は合格」と思えるラインを低めに設定しておくことが、継続のコツです。
わからないところは「印を付けて通り過ぎる」
分からない箇所に出会ったとき、初心者ほどその場で完全に理解しようとしてしまいます。
しかし、関連する知識が不足している状態で1ページを何度も読み返しても、時間だけが過ぎてしまいます。
そこで役に立つのが、「印を付けて一度は通り過ぎる」というルールです。
- 分からない段落や式には、付箋やマーカーで印を付けておく
- 1周目では深追いせず、先に進むことを優先する
- 2周目以降や、実際に手を動かしていて必要になったときに戻ってくる
このように線引きすることで、「分からないところに出会うたびに止まる」という挫折パターンを避けられます。
紙の本か電子書籍かの選び方
技術書を読むとき、紙の本にするか電子書籍にするかで悩む方も多いと思います。
どちらにもメリットがあるため、自分の学び方に合う方を選ぶことが大切です。
紙の本のメリット・デメリット
紙の本には、次のような特徴があります。
- ページをパラパラとめくりながら全体像をつかみやすい
- 余白にメモを書き込んだり、付箋を貼ったりしやすい
- 複数のページを同時に開いて見比べやすい
一方で、物理的なスペースを取ることや、持ち運びがやや不便といったデメリットもあります。
電子書籍のメリット・デメリット
電子書籍の場合は、次のような利点があります。
- スマートフォンやタブレット1台で複数冊を持ち歩ける
- 検索機能でキーワードをすぐに探せる
- 字の大きさを調整できる
反面、ページをまたいだ全体の構造を把握しづらかったり、図表の見開きレイアウトが崩れる場合があるなど、本によっては読みづらさを感じることもあります。
技術書と「ググる」の使い分け
初心者のうちは、技術書を読むよりも検索してブログ記事やQ&Aサイトを読む方が早いと感じる場面も多いでしょう。
実際、技術書とインターネット情報をうまく組み合わせることで、理解のスピードを上げることができます。
「点」と「線」で考える
インターネットの記事は、特定の問題に対するピンポイントな解決策を提供してくれることが多いです。
つまり、「点」の情報に強いと言えます。
一方、技術書はある程度のページ数を使って、背景や仕組み、関連する概念を体系的に説明してくれます。
これは、「線」や「面」の情報に強い媒体です。
そのため、次のように役割を分けるのがおすすめです。
- エラーや具体的な操作方法 → 検索して素早く解決する
- そもそもの考え方や全体の仕組み → 技術書でじっくり理解する
「分からないところはまず検索し、そのあとで技術書に戻る」という往復運動をすることで、理解の抜け漏れを減らすことができます。
読み終えたあとにやっておきたいこと
1冊を読み切った、あるいは自分なりに必要な部分を読み終えたと感じたら、そのまま次の本に進む前に軽く振り返りをしておくと、知識の定着度が大きく変わります。
「この本でできるようになったこと」を言語化する
振り返りの方法としておすすめなのが、次のように自分の言葉でまとめてみることです。
- この本を読む前と比べて、何ができるようになったか
- 特に役に立った章やトピックはどこか
- まだよく分かっていないと感じる部分はどこか
箇条書きでも構わないので、数行でよいから書き残すことで、自分の成長を客観的に認識できます。
それは次の本を読むときの自信にもつながります。
まとめ
技術書は、最初の1冊目で挫折してしまうと「自分には向いていない」と感じやすい媒体です。
しかし、この記事で紹介したように、自分のレベルに合った本を選び、読み方を少し工夫するだけで、挫折しにくさは大きく変わります。
ポイントを整理すると、次のようになります。
- 本を選ぶ前に、自分の目的とゴールを具体的にしておく
- タイトル・目次・最初の30ページを確認して、想定読者のレベルを見極める
- 1周目は分からなくても止まらず、全体像をつかむことを優先する
- 2周目以降は、手を動かしながら必要な章を重点的に読み返す
- 分からない箇所には印を付けて、一度は通り過ぎるルールを徹底する
- 毎日少しずつ読み、1回ごとのゴールを小さく設定して達成感を積み上げる
技術書は、一気に「すべてを理解する」ためのものではなく、今の自分に必要な知識を少しずつ取り出していくためのツールです。
完璧を目指しすぎず、「今日はここまで読めた」と小さな前進を積み重ねていけば、初心者でも確実に読み進められるようになります。
自分に合った1冊を見つけ、無理のないペースで付き合っていくことが、技術書と長く仲良くするための一番の近道です。
