ITエンジニアという言葉はよく耳にしますが、実際にはどんな職種があり、どんな仕事をしているのか、最初はとても分かりにくいものです。
本記事では、初心者の方にも分かるようにITエンジニアの代表的な職種・仕事内容・年収・将来性を体系的に整理します。
未経験からエンジニアを目指す場合の学習ステップや、どの職種を選べばよいかのヒントも丁寧に解説していきます。
ITエンジニアとは?
ITエンジニアの定義と役割

ITエンジニアとは、コンピュータやネットワークを使って、情報システムやサービスを「設計・開発・運用」する専門職の総称です。
1つの職種を指すというより、さまざまな専門分野の総合的な呼び方と考えると分かりやすいです。
ITエンジニアの主な役割は、大きく次のように整理できます。
- ユーザーやビジネスの課題を理解し、どのようなシステム・サービスが必要かを考えること
- プログラミングやインフラ構築を通じて、その仕組みを実際に作り上げること
- 作ったシステムが安定して動くように監視し、トラブルがあれば素早く復旧すること
- 日々の改善を積み重ねて、より便利で安全なサービスへ育てていくこと
ITエンジニアは「コードを書く人」だけではなく、「問題解決のための仕組みを設計して形にする人」と捉えると、その役割がイメージしやすくなります。
ITエンジニアに必要なプログラミングスキル

ITエンジニアといえばプログラミングですが、単に言語を覚えるだけでは不十分です。
実務に必要なスキルは、次のような階層で積み上がっていきます。
まずプログラミングの基礎として、どの言語でも共通する概念を理解する必要があります。
例えば、変数や型、条件分岐、繰り返し処理、関数やメソッド、配列やリストなどのデータ構造といった基本要素です。
これらはどの職種でも必須となる部分です。
次に、扱う分野に応じた言語とフレームワークが必要になります。
例えば、WebエンジニアであればHTML/CSS/JavaScriptやPython、Ruby、スマホアプリならSwiftやKotlin、組み込みならCなどです。
さらに、Gitなどのバージョン管理や、コマンドライン、開発環境の構築など、開発をスムーズに進めるための周辺スキルも重要です。
これらは最初は取っ付きにくく感じますが、一度慣れてしまえばどの現場でも役立つ汎用スキルになります。
未経験からITエンジニアになる一般的なステップ

未経験からITエンジニアになる場合、多くの人が次のようなステップを踏みます。
最初に行うべきことは、どの職種を目指すのか大まかにイメージするための情報収集です。
Web、アプリ、インフラ、データなど、方向性によって学ぶ内容が大きく変わるためです。
そのうえで、1〜3ヶ月程度かけてプログラミングの基礎を学びます。
ここでは、1つの言語に絞って「基礎文法」と「簡単なアプリ」を作れるレベルまで到達することを目標にします。
基礎が固まってきたら、簡単なWebアプリやツールなど、小さくても完成した制作物を作ります。
これがポートフォリオとなり、転職活動での重要なアピール材料になります。
職種の方向性が固まってきたら、その職種に必要な技術を追加で学びます。
例えばWebエンジニアなら、フレームワークやデータベースを学んで、ログイン機能付きのアプリを作るなどです。
最後に、ポートフォリオを武器に未経験OKの求人に応募し、実務経験を積みながらスキルの幅を広げていきます。
この流れを意識することで、遠回りせずにエンジニア転職の準備を進めることができます。
開発系エンジニアの職種一覧
Webエンジニア

Webエンジニアは、WebブラウザやスマホのWebビュー上で動くサービスを開発するエンジニアです。
ECサイトやSNS、社内の業務システムなど、多くの人が日常的に使っている仕組みの裏側を支えています。
Webエンジニアは、担当領域によって次のように分かれることが多いです。
- フロントエンドエンジニア
ブラウザ上で動く部分を担当し、HTML/CSS/JavaScriptやReact、Vueなどのフレームワークを使って、見た目や動きを作ります。ユーザー体験を良くするデザイン寄りのスキルも求められます。 - バックエンドエンジニア
サーバ側の処理を担当し、Python、Ruby、PHP、Javaなどを使って、データベースとの連携やビジネスロジックを実装します。 - フルスタックエンジニア
フロントとバックエンドの両方をある程度こなせる人を指します。小規模サービスやスタートアップで重宝されますが、最初はまずどちらかを軸に身につけると良いです。
Webエンジニアは求人も多く、未経験からでも比較的入りやすい職種といえます。
その分競争もありますが、学習教材やコミュニティが豊富で独学しやすいという大きなメリットがあります。
簡単なWebアプリのイメージ(C言語でのロジック例)
実際のWeb開発では、C言語をそのまま使うことは少ないですが、ここでは「Webアプリの中で行われる処理のイメージ」をC言語の簡単なコードで示します。
#include <stdio.h>
#include <string.h>
// ユーザー情報を管理する構造体
typedef struct {
char username[50];
char password[50];
} User;
// 簡易的なログイン処理の関数
int login(User *user, const char *inputName, const char *inputPass) {
// 入力されたユーザー名とパスワードが
// 登録情報と一致しているかチェックします
if (strcmp(user->username, inputName) == 0 &&
strcmp(user->password, inputPass) == 0) {
return 1; // ログイン成功
} else {
return 0; // ログイン失敗
}
}
int main(void) {
User user;
// 登録済みユーザー情報(本来はデータベースに保存されます)
strcpy(user.username, "test_user");
strcpy(user.password, "secret123");
char nameInput[50];
char passInput[50];
// ユーザーからの入力を受け取る(本来はWebフォームから受信します)
printf("ユーザー名を入力してください: ");
scanf("%49s", nameInput);
printf("パスワードを入力してください: ");
scanf("%49s", passInput);
// ログイン処理を実行
if (login(&user, nameInput, passInput)) {
printf("ログインに成功しました。\n");
} else {
printf("ユーザー名またはパスワードが間違っています。\n");
}
return 0;
}
ユーザー名を入力してください: test_user
パスワードを入力してください: secret123
ログインに成功しました。
このような「入力を受け取り、条件に応じて結果を返す」という考え方が、Webアプリの基本になります。
実際にはWebサーバとブラウザがHTTPでやり取りを行いますが、ロジック部分はこのようなイメージです。
アプリエンジニア

アプリエンジニアは、スマートフォン(iOS/Android)やデスクトップで動作するアプリケーションを開発するエンジニアです。
SNSアプリ、地図アプリ、家計簿アプリ、ゲームアプリなど、ユーザーがストアからインストールして使うものをイメージすると分かりやすいです。
iOSアプリでは主にSwift、AndroidアプリではKotlinが標準的に使われています。
また、FlutterやReact Nativeといったクロスプラットフォーム技術を用いて、1つのコードからiOSとAndroidの両方に対応する開発スタイルも一般的です。
Webエンジニアとの大きな違いは、スマホ特有の機能(カメラ、GPS、プッシュ通知など)を扱う点と、アプリのストアレビューや公開・更新のフローを意識する必要がある点です。
ユーザー体験に直結する部分が多いため、UI/UXへの理解も強く求められます。
組み込みエンジニア

組み込みエンジニアは、家電製品や自動車、工場の機械などの中で動作する小さなコンピュータ(マイコン)向けのソフトウェアを開発するエンジニアです。
目に見える画面やWebページはなくても、内部では多くのプログラムが制御を行っています。
組み込み開発では、C言語やC++がよく使われます。
ハードウェアに近い層を扱うため、メモリやCPUの性能制約を意識してプログラムを書く必要があります。
また、リアルタイムOS(RTOS)や、センサー・モーターなどとの連携も重要なテーマです。
組み込みの簡単な例(C言語)
#include <stdio.h>
// LEDの状態を表す定数
#define LED_OFF 0
#define LED_ON 1
// LEDの状態を保持する変数(本来はハードウェアレジスタ)
int ledState = LED_OFF;
// LEDを点灯させる関数
void turnOnLed(void) {
ledState = LED_ON;
// 実機ではここでハードウェアレジスタに書き込む処理を行います
printf("LEDを点灯しました。\n");
}
// LEDを消灯させる関数
void turnOffLed(void) {
ledState = LED_OFF;
// 実機ではここでハードウェアレジスタに書き込む処理を行います
printf("LEDを消灯しました。\n");
}
// センサー値に応じてLED制御を行うメインループ
int main(void) {
int sensorValue = 0;
while (1) {
printf("センサー値を入力してください(0〜100): ");
if (scanf("%d", &sensorValue) != 1) {
break; // 入力エラーで終了
}
// センサー値が50以上ならLEDを点灯、それ未満なら消灯する
if (sensorValue >= 50) {
turnOnLed();
} else {
turnOffLed();
}
printf("現在のLED状態: %s\n",
ledState == LED_ON ? "ON" : "OFF");
}
return 0;
}
センサー値を入力してください(0〜100): 70
LEDを点灯しました。
現在のLED状態: ON
センサー値を入力してください(0〜100): 30
LEDを消灯しました。
現在のLED状態: OFF
このような制御ロジックを、実際にはセンサーやLEDと接続されたマイコン上で動かすイメージです。
ゲームプログラマー

ゲームプログラマーは、家庭用ゲーム機、PC、スマホ向けのゲームタイトルを開発するエンジニアです。
華やかなイメージがありますが、とても技術的な要素が多い職種です。
主な使用技術としては、C++やC#、ゲームエンジン(Unity、Unreal Engineなど)が挙げられます。
ゲームの進行を管理する「ゲームロジック」、描画や物理演算、高速な処理が求められる部分を実装することが多いです。
また、レベルデザイナーやグラフィッカーが使うツールを開発したり、オンラインゲームであればサーバ側のシステムを構築するなど、役割は幅広くなります。
アルゴリズムや数学、物理の知識が活きる場面も多いです。
AIエンジニア・機械学習エンジニア

AIエンジニア・機械学習エンジニアは、機械学習モデルを用いて予測や分類を行うシステムを設計・開発するエンジニアです。
需要予測、レコメンド、異常検知、画像認識、自然言語処理など、さまざまなビジネス領域で活躍しています。
この分野ではPythonが事実上の標準言語となっており、NumPy、pandas、scikit-learn、TensorFlow、PyTorchなどのライブラリを扱います。
統計や線形代数、確率などの数学基礎も必要です。
AIエンジニアという言葉は広く使われますが、実際には次のように役割が分かれることがあります。
- 機械学習エンジニア: モデル設計・学習・評価・API化などを行う
- MLOps/MLエンジニア: 学習基盤の整備やモデルの運用・自動化を担当する
- データサイエンティストとの協業: ビジネス課題の定義や分析と連携しながら進める
未経験から直接ここを目指すのはややハードルが高いですが、Webエンジニアなどで基礎を積んでから転向するキャリアパスも現実的です。
データエンジニア・データサイエンティスト

データエンジニアは、大量のデータを集めて蓄積し、分析に使える形に整える「データ基盤」を構築・運用するエンジニアです。
ログの収集パイプライン、DWH(データウェアハウス)、ETL処理などを設計します。
SQLやPython、クラウドのデータ系サービス(BigQuery、Redshiftなど)を扱うことが多いです。
データサイエンティストは、ビジネスの課題をデータ分析で解決する役割で、統計や機械学習の知識を用いて仮説検証を行い、意思決定につなげます。
プログラミングだけでなく、ビジネス理解やコミュニケーションも重要になります。
両者は密接に関わり合って仕事を進めるため、データエンジニア寄りのサイエンティスト、分析もできるエンジニアといったハイブリッドな人材も多くなっています。
クラウドエンジニア

クラウドエンジニアは、AWSやAzure、GCPなどのクラウドサービス上でシステムを構築・運用するエンジニアです。
物理サーバを自社で持たず、クラウド上に環境を用意するのが当たり前になりつつある現在、需要が非常に高まっています。
扱う分野は幅広く、仮想マシン、コンテナ(Kubernetesなど)、マネージドデータベース、ロードバランサー、セキュリティグループ、監視サービスなど、多岐にわたります。
また、TerraformやCloudFormationのようなIaC(Infrastructure as Code)ツールを使って、インフラ構成をコードで管理することも重要です。
クラウドエンジニアには、インフラの知識とアプリケーション側の理解の両方が求められます。
Webエンジニアからクラウド方向にキャリアを広げる人も多く、将来性の高い領域です。
各職種の平均年収と年収アップのポイント
開発系エンジニアの年収は、経験年数や企業規模、技術スタックによって幅がありますが、目安として次のように整理できます(日本国内、正社員、中央値イメージ)。
| 職種 | 目安年収レンジ(経験3〜5年) | 年収アップの主なポイント |
|---|---|---|
| Webエンジニア(フロント/バック) | 450〜700万円 | モダン技術習得、設計・要件定義を担う |
| アプリエンジニア | 450〜750万円 | iOS/Android両対応、ストア運用・分析まで理解 |
| 組み込みエンジニア | 450〜750万円 | 車載・医療など高単価分野、要件定義〜設計を担当 |
| ゲームプログラマー | 400〜700万円 | コンシューマ・海外タイトル経験、エンジン深い理解 |
| AI/機械学習エンジニア | 600〜900万円以上 | 実サービスでの運用実績、MLOpsまでカバー |
| データエンジニア | 550〜850万円 | 大規模データ基盤構築、クラウドスキル |
| データサイエンティスト | 600〜900万円以上 | ビジネス提案力、意思決定へのインパクト |
| クラウドエンジニア | 550〜850万円 | マルチクラウド、SRE寄りのスキル |
年収を高めたい場合、単に技術だけでなく、上流工程(要件定義や設計)に関わること、ビジネスインパクトの大きい領域に携わることが重要です。
また、クラウドやデータなどの成長分野にスキルを伸ばすことで、単価の高い案件に関わりやすくなります。
将来性の高いプログラミング言語と分野

将来性という観点から見ると、次のような言語と分野は今後も需要が続くと考えられます。
- Python(AI・データ・Webバックエンド)
AI・機械学習、データ分析の事実上の標準言語であり、Web開発でも使われます。学習コストが比較的低く、未経験者にも取り組みやすいです。 - TypeScript/JavaScript(Webフロント・バック)
Webのフロントエンドは今後も重要であり、TypeScriptは大規模開発での標準になりつつあります。Node.jsでバックエンドも書けるため、フルスタック志向の人にも向いています。 - Go(クラウド・サーバサイド)
シンプルで高速な言語で、クラウドネイティブなサービスやマイクロサービスで人気が高まっています。インフラ寄りのツールやバックエンド開発で強みがあります。 - Kotlin/Swift(モバイルアプリ)
スマホアプリの需要が続く限り、これらの言語は重要です。特にKotlinはサーバサイドでも使える場面が増えています。 - C/C++(組み込み・高性能領域)
新規参入は少しハードルが高いですが、車載やロボットなど、リアルタイム性が求められる分野では今後も利用され続けます。
未経験の方は、PythonかJavaScript/TypeScriptから始めて、徐々に興味のある分野に広げていくのが現実的で取り組みやすい選択肢です。
インフラ・運用・品質系エンジニアの職種一覧
インフラエンジニア

インフラエンジニアは、システムが動くための土台となるサーバやネットワークを設計・構築・運用するエンジニアです。
近年はクラウドが主流ですが、オンプレミス(自社サーバ)環境も多く残っています。
インフラエンジニアの仕事は、OSのインストールや設定、Webサーバやデータベースなどのミドルウェア導入、ネットワーク機器の設定、バックアップや監視の仕組み構築など、多岐にわたります。
システムの安定稼働を支える縁の下の力持ち的な存在です。
クラウドの普及により、物理サーバを直接触る機会は減少している一方で、クラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッド構成など、新しい設計の需要も高まっています。
SRE(site reliability engineer)の仕事内容

SRE(Site Reliability Engineer)は、システムの信頼性を高い水準で維持しつつ、開発スピードも落とさないようにするための専門職です。
Googleが提唱した概念で、日本でも大規模サービスを提供する企業を中心に普及しています。
SREの特徴は、インフラ運用を手作業ではなく「ソフトウェア」として自動化するという考え方です。
監視やデプロイ、自動スケーリング、障害対応の仕組みなどをコードとして整備し、エンジニアリングの力で運用を改善します。
また、SLI(サービスレベル指標)、SLO(目標値)を定めて、エラーバジェットに基づき、どこまでリリースを許容するかといったルールづくりにも関わります。
開発とインフラの両方を理解している人に向いている職種です。
情報システム部門(社内SE)の役割

情報システム部門、いわゆる社内SEは、自社内で使われるITシステム全般を企画・導入・運用する役割です。
開発会社で働くエンジニアとは異なり、自社の業務や社員を顧客としてシステムを整える点が特徴です。
社内SEの仕事は、多くの場合、次のようなものを含みます。
- 社内の業務課題をヒアリングし、システム導入や改善の企画を行う
- 外部ベンダーに開発を依頼し、要件定義や進捗管理、受け入れテストを行う
- 社員からの問い合わせやトラブルに対応するヘルプデスク業務
- PCやソフトウェアライセンスの管理、アカウント管理、セキュリティ対策の実施
プログラミングをメインにする職場もあれば、ベンダーコントロールや企画が主になる職場もあります。
社内調整やコミュニケーションが得意な方に向いているポジションといえます。
テストエンジニア・QAエンジニア

テストエンジニア・QAエンジニアは、ソフトウェアが仕様どおりに動き、不具合がないかを確認する「品質保証」を専門に行うエンジニアです。
単にテストを実行するだけではなく、どのような観点でテストすべきかを設計する役割も重要です。
仕事の内容として、画面や機能ごとのテストケースを作成し、手動または自動テストで実行します。
最近では、JUnitやpytest、Seleniumなどを使った自動テスト環境の構築も重要になっており、プログラミングスキルを活かせるQAエンジニアの価値が高まっています。
品質に対する意識が高く、細かいところに気づける人や、システム全体のつながりを俯瞰して見られる人に適した職種です。
セキュリティエンジニア・脆弱性診断

セキュリティエンジニアは、システムやネットワークを攻撃や不正アクセスから守るための設計・監視・対策を行うエンジニアです。
脆弱性診断では、攻撃者の視点でシステムの弱点を洗い出し、改善提案をします。
主な業務として、ファイアウォールやIDS/IPSの設計・運用、ログ監視、インシデント対応、セキュリティポリシー策定、社員向け教育などがあります。
Webアプリの脆弱性診断では、SQLインジェクションやXSSなど、OWASP Top 10に挙げられる典型的な脆弱性をチェックします。
この分野は、攻撃手法を理解したうえで防御策を考える必要があるため、高い専門性が求められますが、その分需要も高く、やりがいのある領域です。
運用保守エンジニアの日常業務

運用保守エンジニアは、すでに稼働しているシステムを安定して動かし続ける役割です。
新規開発よりも、日々の運用やトラブル対応が中心になります。
具体的な業務として、監視ツールのアラート確認、ログのチェック、バックアップの実行、定例バッチ処理の監視、ユーザーからの問い合わせ対応などがあります。
障害が起きた場合には、一次対応として状況を調査し、開発チームやインフラチームと連携して解決にあたります。
未経験でも入りやすいポジションですが、手作業中心の運用に留まるとスキルアップしにくい側面があります。
そのため、運用の自動化や改善にも積極的に取り組むことで、SREやインフラエンジニアへのステップアップにつなげやすくなります。
インフラ系エンジニアの年収とキャリアパス
インフラ・運用・品質系エンジニアの年収目安と、代表的なキャリアパスは次のとおりです。
| 職種 | 目安年収レンジ(経験3〜5年) | 主なキャリアパス例 |
|---|---|---|
| インフラエンジニア | 450〜750万円 | クラウドアーキテクト、SRE、セキュリティエンジニア |
| SRE | 600〜900万円 | テックリード、アーキテクト、エンジニアリングマネージャ |
| 社内SE | 400〜700万円 | IT企画、情報システム部門マネージャ、ITコンサル |
| テスト/QAエンジニア | 400〜700万円 | テスト自動化エンジニア、QAマネージャ、開発エンジニア |
| セキュリティエンジニア | 600〜900万円 | セキュリティアーキテクト、CISO補佐、コンサル |
| 運用保守エンジニア | 380〜650万円 | インフラエンジニア、SRE、社内SE |
インフラ系で年収を上げるためには、クラウド・自動化・セキュリティの3点をキーワードとしてスキルを伸ばすことが重要です。
また、設計や要件定義など、より上流の工程に関わることで、キャリアの選択肢も広がっていきます。
リモートワークと需要の動向

近年のリモートワークの普及により、ITエンジニアの働き方は大きく変わりました。
特に、Webエンジニア、アプリエンジニア、クラウドエンジニア、SRE、データエンジニアといった職種は、フルリモートや地方在住で首都圏企業に所属するケースも珍しくありません。
一方で、社内SEや一部の運用保守エンジニアは、社内ネットワークやオンプレミス機器の対応が必要な場合、出社が前提となることもあります。
ただし、VPNやリモートアクセスを活用したハイブリッドな体制も増えています。
需要の面では、クラウド・SaaS・DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れにより、ITエンジニア全体の求人は長期的に高い水準で推移すると考えられます。
その中でも、クラウド・AI・データ・セキュリティ・SREといった領域は、特に伸びが期待される分野です。
ITエンジニアのキャリアパスと選び方
ITエンジニアのキャリアステージ

ITエンジニアのキャリアは、一般的に次のようなステージで語られることが多いです。
ジュニアエンジニアは、経験1〜3年程度で、先輩の指示のもとで実装やテストを担当します。
まずはコードを書く力と基本的な開発プロセスを身につける段階です。
ミドルレベルになると、機能単位で任される範囲が広がり、設計やレビューにも関わるようになります。
経験3〜7年程度で、チームの中核となっていくタイミングです。
シニアやリードエンジニアになると、システム全体の設計や技術選定を行い、チームメンバーを技術的にリードします。
ここから、アーキテクトやマネージャ、ITコンサルなど、さまざまな方向にキャリアを広げることができます。
エンジニアからPM・ITコンサルへのキャリア

エンジニアとして経験を積んだ後、プロジェクトマネージャ(PM)やITコンサルタントへキャリアチェンジする人も多くいます。
PMは、プロジェクトの予算・スケジュール・品質を管理し、チームをまとめてシステムを完成させる役割です。
ITコンサルタントは、クライアント企業の経営課題や業務課題をITで解決するための提案・設計を行います。
どちらの職種も、技術を理解したうえでビジネスの言葉で説明できる力が求められます。
開発現場での経験を持つことは大きな強みであり、エンジニア出身のPMやコンサルは高く評価されることが多いです。
一方で、技術スペシャリストとしての道もあります。
アーキテクトやテックリードとして、大規模システムの設計を任されたり、特定の分野(クラウド、セキュリティ、データなど)の第一人者を目指すことも可能です。
副業・フリーランスエンジニアという働き方

一定の経験を積んだエンジニアの中には、副業やフリーランスという働き方を選ぶ人も増えています。
副業エンジニアは、本業(会社員)として働きながら、週数時間〜数十時間程度、個人で開発案件を受けるスタイルです。
本業の収入があるため、リスクを抑えつつ、経験と収入を増やせます。
クラウドソーシングやエージェントサービスを通じて案件を探すケースが一般的です。
フリーランスエンジニアは、会社に所属せず、案件ごとに契約して働きます。
時間と場所の自由度が高く、年収も上げやすい一方で、案件獲得や自己管理、保険・年金などの面で自己責任の範囲が広くなります。
いずれの場合も、ポートフォリオや実務実績、コミュニケーション力が重要な評価軸となります。
未経験のうちからでも、小さな制作物を作り始めることで、将来の選択肢を広げることができます。
未経験者向けの職種の選び方と学習ロードマップ

未経験からITエンジニアを目指す場合、最初の職種選びが悩みどころです。
ただ、完璧に決める必要はなく、大まかな方向性が決まっていれば十分です。
例えば、次のような観点で考えると整理しやすくなります。
- 目に見える画面や動きが好き: Webフロントエンドやアプリエンジニア
- サービスの裏側や仕組み作りが好き: Webバックエンドやクラウドエンジニア
- 機械やハードウェアが好き: 組み込みエンジニア
- 数字やデータ分析が好き: データエンジニア・データサイエンティスト
学習ロードマップとしては、次のような流れをおすすめします。
まず、1〜2ヶ月程度でプログラミングの基礎を学びます。
最初の言語は、Web志向ならJavaScriptかPython、アプリ志向ならSwiftやKotlinなど、自分の興味に近いものを選ぶと学習が続きやすいです。
次に、簡単なアプリやWebサイトを完成させる経験をします。
Todoリスト、日記アプリ、簡単なゲームなど、内容はシンプルで構いません。
「動くもの」を作ることで、学習意欲が高まり、理解も深まります。
その後、職種に応じた技術(フレームワーク、データベース、クラウドなど)を追加で学び、ポートフォリオとして見せられるレベルまでブラッシュアップしていきます。
この段階まで来れば、未経験OKの求人に応募できる状態になっているはずです。
初心者が身につけるべき基礎スキル一覧

どの職種を目指すにしても、すべてのITエンジニアに共通する基礎スキルがあります。
最初からすべて完璧にする必要はありませんが、時間をかけて少しずつ身につけていくことが大切です。
代表的な基礎スキルとしては、次のようなものが挙げられます。
- プログラミング言語1つの基礎文法(条件分岐、ループ、関数、配列など)
- Gitを使ったバージョン管理(コミット、ブランチ、プルリクエストの流れ)
- Linuxの基本コマンド(ファイル操作、プロセス確認など)
- ネットワークの基本(HTTP、IPアドレス、DNSなど)
- データベースとSQLの基礎(テーブル、SELECT/INSERT/UPDATE/DELETEなど)
- 簡単な設計の考え方(責務の分割、モジュール化など)
- 仕様書やREADMEを書くドキュメント力、チームでのコミュニケーション
これらはすべて、1日や2日で身につくものではありません。
しかし、基礎を押さえておくことで、新しい技術に出会ったときも理解しやすくなるため、結果的に成長スピードが上がっていきます。
まとめ
ITエンジニアと一口に言っても、Webやアプリ、組み込み、インフラ、データ、セキュリティなど、多様な職種とキャリアパスが存在します。
大切なのは、最初から完璧に職種を決めることではなく、自分の興味に近い分野を選び、小さくても動くものを作りながら基礎を積み上げていくことです。
本記事で全体像をつかんだうえで、まずは1つの言語と1つの小さな作品づくりから、ITエンジニアへの一歩を踏み出してみてください。
