「プログラミングスクールに入会したけれど、やっぱり解約したい」「高額な受講料を支払った直後に、自分には合わないと気づいた」といった悩みを抱えていませんか?
プログラミングスクールの受講料は数十万円から高いものでは100万円近くになるため、契約後の後悔は精神的にも大きな負担となります。
しかし、諦める必要はありません。
一定の条件を満たしていれば、法律に基づく「クーリングオフ」によって、無条件で契約を解除し、全額返金を受けることが可能です。
また、クーリングオフ期間を過ぎていたとしても、中途解約などの手段が残されている場合があります。
この記事では、プログラミングスクールのクーリングオフ適用条件や、具体的な通知書の書き方、トラブルになった際の相談先について、専門的な視点から徹底的に解説します。
プログラミングスクールはクーリングオフできる?基本の仕組み
まず結論から申し上げますと、多くのプログラミングスクールはクーリングオフの対象となりますが、すべてのケースで適用されるわけではありません。
クーリングオフとは、特定商取引法(特商法)などの法律で定められた消費者を守る制度です。
消費者が一度契約を申し込んだ後でも、冷静になって考え直す時間を与え、一定期間内であれば無条件で申し込みの撤回や契約解除ができる仕組みです。

特定商取引法における位置づけ
プログラミングスクールは、特定商取引法における「特定継続的役務提供(とくていけいぞくてきえきむていきょう)」に該当する可能性が高いサービスです。
これは、長期間にわたって継続的にサービスを受ける契約であり、かつ高額な支払いが発生するものが対象となります。
エステティックサロンや語学教室、学習塾などがこれに該当しますが、「パソコン教室」や「知識・技術の教授」を行うプログラミングスクールも、要件を満たせばこの枠組みに入ります。
期間は「契約書面を受け取った日」から8日間
クーリングオフが可能な期間は、「法定契約書面を受け取った日を含めて8日間」です。
ここで重要なのは、「申し込みをした日」や「支払った日」ではなく、法律で定められた事項が記載された契約書面(概要書面ではない)を受け取った日が起算点になるということです。
もし、スクール側から適切な契約書面が交付されていない場合、8日間を過ぎていてもクーリングオフが可能となるケースがあります。
クーリングオフ適用の条件チェックリスト
ご自身の契約しているプログラミングスクールがクーリングオフの対象になるかどうか、以下の条件を確認してください。
これらは「特定継続的役務提供」として認められるための要件です。

1. 契約期間が2ヶ月を超えていること
一つ目の条件は、サービス提供期間(受講期間)が2ヶ月を超えていることです。
例えば、「1ヶ月集中コース」のような短期プランの場合、この要件を満たさないため、特定継続的役務提供としてのクーリングオフは適用されません。
2. 契約金額が5万円を超えていること
二つ目の条件は、入学金、受講料、教材費などを合わせた契約総額が5万円を超えていることです。
プログラミングスクールの多くは数十万円の価格設定であるため、この条件はほとんどのケースでクリアしているでしょう。
3. 「パソコン教室」等の指定役務に該当すること
ここが最も複雑なポイントです。
特定商取引法では、クーリングオフの対象となる業種(指定役務)が決まっています。
プログラミングスクールは通常、以下のいずれかとして扱われます。
- パソコン教室:パソコン等の操作方法を教えるもの。
- 学習塾:学校教育の補習や入試準備を目的とするもの(※一般的な社会人向けスクールはこれには該当しにくい)。
多くの通学型・オンライン型プログラミングスクールは「パソコン教室」の範疇に含まれると解釈されますが、一部の事業者は「うちは『通信販売』にあたるためクーリングオフ対象外だ」と主張することがあります。
しかし、実態として講師による指導や添削が継続的に行われる場合、特定継続的役務提供とみなされる可能性が高くなります。
クーリングオフ通知書の書き方と送り方(テンプレート付)
クーリングオフを行うと決めたら、速やかに行動に移す必要があります。
口頭(電話)で伝えるだけでは「言った・言わない」のトラブルになる可能性があるため、必ず書面または電磁的記録(メール等)で証拠を残す形で通知します。
方法1:内容証明郵便またはハガキで送る
最も確実な方法は、郵便局の内容証明郵便を利用することです。
これにより、「いつ」「誰が」「誰に」「どのような内容の」手紙を出したかを郵便局が証明してくれます。
簡易書留や特定記録郵便でも送付の記録は残りますが、本気で返金を求めるなら内容証明がベストです。
また、ハガキ(特定記録郵便を推奨)で送ることも法的には有効です。
その場合は、ハガキの両面をコピーしてから投函してください。

書面の記載テンプレート
以下は、ハガキや書面で送る際の文面テンプレートです。
通知書
契約年月日:令和〇年〇月〇日
商品名(コース名):プログラミングマスターコース 受講契約
契約金額:350,000円
販売会社:株式会社〇〇
担当者名:〇〇 〇〇 様
この度、上記契約を解除(クーリングオフ)いたします。
つきましては、私が支払った代金350,000円を速やかに下記口座へ返還してください。
また、商品(教材等)の引き取りをお願いします。
【振込先口座】
〇〇銀行 〇〇支店
普通 1234567
口座名義:〇〇 〇〇(あなたの名前)
令和〇年〇月〇日
住所:東京都〇〇区〇〇 1-2-3
氏名:〇〇 〇〇
※クレジット契約をしている場合は、クレジット会社にも同様の通知を送る必要があります。
方法2:電磁的記録(メール・Webフォーム)で行う
2022年6月の法改正により、クーリングオフの通知がメールやWebフォームなどの電磁的記録でも可能になりました。
スクール側が指定するフォームがある場合はそこから、ない場合は代表メールアドレス等に送信します。
ただし、メールの場合は「送信したこと」の証明はできても、「相手が受信したこと」や「改ざんされていないこと」の証明力が郵便より弱くなる場合があります。
メールで行う際は、以下の点に注意してください。
- 送信メールのスクリーンショットを撮る。
- 「開封確認」機能があれば設定する。
- BCCに自分の別アドレスを入れて送信する。
クーリングオフ期間を過ぎてしまった場合(中途解約)
「契約してから8日以上経ってしまった」という場合でも、諦めるのは早計です。
特定継続的役務提供に該当するプログラミングスクールであれば、クーリングオフ期間経過後も「中途解約」を行う権利が法律で保障されています。

解約違約金の上限ルール
中途解約をする場合、スクール側は消費者に解約料(違約金)を請求できますが、その金額には法律上の上限が設けられています。
スクールが「いかなる場合も返金しない」と規約に書いていても、法律が優先されます。
1. サービス提供開始前の場合
契約は結んだが、まだ授業やカリキュラムが始まっていない場合、解約料の上限は15,000円です。
すでに何十万円も支払っている場合は、15,000円を差し引いた全額が返金される計算になります。
2. サービス提供開始後の場合
すでに受講を開始している場合、請求できる解約料の上限は以下の合計額になります。
- すでに提供されたサービスの対価(受講した分の授業料相当額)
5万円または契約残額の20%のいずれか低い方の金額
つまり、「全額返金」は難しくなりますが、残りの期間分の受講料から所定の違約金を引いた金額は取り戻せる可能性が高いのです。
よくあるトラブルと対処法
プログラミングスクールの解約に関しては、事業者側との認識の食い違いでトラブルになるケースが後を絶ちません。
ここでは代表的な反論パターンと、それに対する対処法を解説します。
「利用規約に『返金不可』と書いてある」と言われた
これは最も多いケースです。
しかし、特定商取引法などの消費者保護法規は強行法規であり、消費者に不利な特約は無効となります。
クーリングオフの要件を満たしているにも関わらず「規約だから無理」と言われた場合は、「特商法のクーリングオフ規定は規約よりも優先されるはずです」と毅然と伝えましょう。
「うちは通信販売だからクーリングオフ対象外」と言われた
オンライン完結型のスクールでよくある主張です。
確かに、単に動画教材を購入して自分で学習するだけのスタイル(通信販売)であれば、クーリングオフ制度の適用外となります。
しかし、以下のようなサポートがある場合は「特定継続的役務提供」とみなされる可能性が高いです。
- メンターによる定期的な面談がある。
- SlackやChatworkなどで質問対応を継続的に行っている。
- 課題の添削指導がある。
実態が「教室」と変わらないサポート体制であれば、交渉の余地は十分にあります。
入学金や教材費は返ってこないと言われた
クーリングオフが成立した場合、入学金や教材費を含めた全額が返金対象となります。
また、スクール側が推奨して購入させたPCやソフトウェア(関連商品)についても、契約書に記載があれば同時にクーリングオフが可能です。
ただし、自分でAmazonなどで購入したPCなどは対象外となることが多いため注意が必要です。
どうしても解決しない時の相談先
自分でスクール側と交渉しても話が進まない、あるいは高圧的な態度を取られて怖いといった場合は、専門機関に相談してください。

消費者生活センター(局番なし188)
まず最初に相談すべきは、消費者生活センターです。
局番なしの188(いやや!
)にかけると、最寄りの相談窓口を案内してくれます。
専門の相談員が、契約内容を確認した上で、クーリングオフが可能かどうかの判断や、具体的な通知の書き方のアドバイスをしてくれます。
場合によっては、相談員がスクール側へ連絡を入れてくれる「あっせん」を行ってくれることもあります。
弁護士・司法書士
金額が大きく、スクール側が法的な反論をしてくる場合や、裁判も辞さない場合は、消費者問題に強い弁護士や司法書士に依頼することをおすすめします。
費用はかかりますが、代理人として交渉してくれるため、精神的な負担は大幅に軽減されます。
まとめ
プログラミングスクールの契約は、決して安い買い物ではありません。
だからこそ、「失敗した」と感じた時のための救済措置としてクーリングオフ制度が存在します。
今回の記事の要点を振り返ります。
- プログラミングスクールは、要件を満たせば特定継続的役務提供としてクーリングオフが可能。
- 期間は法定書面受領日から8日間。
- 通知は内容証明郵便または電磁的記録で確実に証拠を残す。
- 8日を過ぎても中途解約で一部返金を受けられる権利がある。
- 「返金不可」の規約よりも法律が優先される。
重要なのは、迷ったらすぐに行動することです。
クーリングオフには8日間という厳しい期限があります。
「どうしよう」と悩んでいる間に期限が過ぎてしまっては元も子もありません。
まずは契約書の日付を確認し、通知書を作成しましょう。
自分一人での判断が不安な場合は、すぐに消費者生活センター(188)へ電話してください。
あなたの正当な権利を行使し、大切なお金を守りましょう。
