エンジニアへの転職を検討する際、多くの人が選択肢に入れるのが「職業訓練校(ハロートレーニング)」のプログラミングコースです。
しかし、ネット上で情報を検索すると「職業訓練校 プログラミング やめとけ」「時間の無駄」「就職できない」といったネガティブなキーワードが目につき、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、職業訓練校は「使い方」と「目的」さえ間違えなければ、最強のコストパフォーマンスを誇る学習環境です。
しかし、有料スクールと同じような期待を持って入学すると、大きな後悔に繋がるのも事実です。
この記事では、職業訓練校のプログラミングコースがなぜ「評判が悪い」と言われるのか、その理由を包み隠さず解説し、実際に就職できるのかという現実や、有料スクールとの決定的な違いについて詳しく掘り下げていきます。

職業訓練校のプログラミングコースが「やめとけ」と言われる5つの理由
職業訓練校の評判を調べると、辛辣な意見が多く見受けられます。
これらは単なる悪口ではなく、構造的な問題やミスマッチに起因するものです。
まずは、なぜ「やめとけ」と言われるのか、その背景にある5つの理由を解説します。
1. カリキュラムが時代遅れ・内容が浅い傾向にある
IT業界の技術進歩は非常に早いですが、公的機関である職業訓練校は、カリキュラムの改定に時間がかかります。
Web開発の現場では現在、ReactやVue.js、Next.jsといったモダンなフレームワークや、AWSなどのクラウドインフラの知識が求められます。
しかし、多くの職業訓練校では以下のような状況が見られます。
- Javaのバージョンが古い、またはServlet/JSPなどのレガシー技術が中心
- HTML/CSSの記述が古く、レスポンシブデザインやモダンなCSS設計が学べない
- Git(バージョン管理)やチーム開発の演習が圧倒的に不足している
「現場で即戦力になる技術」を期待して入学すると、実際の求人要件とのギャップに愕然とすることになります。
2. 受講生のモチベーションに大きな格差がある
職業訓練校には、本気でエンジニアを目指す人もいれば、「とりあえず失業保険を延長したいから」という理由で通う人もいます。

グループワークやチーム制作がある場合、モチベーションが低い受講生と同じチームになると、学習の進行が妨げられるだけでなく、精神的なストレスを感じる原因になります。
周囲に流されず、自分の学習に集中する強い意志が必要です。
3. 学習期間が短く、実務レベルには到達しにくい
多くのプログラミングコースは、3ヶ月から6ヶ月程度の期間で設定されています。
未経験者がプログラミングの基礎から応用、ポートフォリオ作成までをこの期間で行うのは、物理的に非常に困難です。
有料のプログラミングスクールであれば、効率化されたカリキュラムで600〜1000時間の学習時間を確保しますが、職業訓練校の授業時間(平日9時〜17時)だけでは圧倒的に足りません。
自宅での予習・復習や、土日を使った独学がなければ、エンジニアとして就職できるレベルには到達できないのが現実です。
4. 就職先が客先常駐(SES)やブラック企業ばかりという噂
「職業訓練校からの就職先はブラック企業しかない」という噂もよく耳にします。
これは半分正解で、半分は誤解です。
未経験からエンジニアを目指す場合、実績がないため、最初から「自社開発企業」や「有名Web系ベンチャー」に入社するのは非常にハードルが高いです。
その結果、多くの卒業生はSES(客先常駐)と呼ばれる業態の企業に就職することになります。
SES自体が悪ではありませんが、中には「低賃金で使い潰す」「プログラミングとは関係のないテスターやコールセンター業務に派遣する」といった悪質な企業も存在します。
職業訓練校に来る求人票の中には、こうした企業が含まれている可能性があり、自分で企業を見極める目を持たないと、ブラック企業に入社してしまうリスクがあります。
5. 講師が現役エンジニアではない可能性がある
有料スクールでは「現役バリバリのエンジニア」が講師であることを売りにしていますが、職業訓練校の場合はそうとは限りません。
- すでに引退して長期間現場を離れている元エンジニア
- パソコンスクールのインストラクター(Officeソフトが専門)
- テキストの内容をなぞるだけの講師
もちろん、素晴らしい指導力を持った講師もいますが、「現場のリアルな話」や「最新のトレンド」を聞ける機会は、有料スクールに比べて少ない傾向にあります。
それでも職業訓練校に通うべき強力なメリット
ここまでデメリットを挙げましたが、それを補って余りある「最強のメリット」が職業訓練校には存在します。
経済的な事情を抱える求職者にとって、これほど恵まれた制度は他にありません。

- キャプション:金銭的な不安を解消しながら学習できるのが最大の強みです。
1. 受講料が原則無料(テキスト代のみ)
民間のプログラミングスクールに通う場合、安くても30万円、高額なものでは80万円以上の費用がかかります。
一方、職業訓練校は受講料が無料です(テキスト代として1〜2万円程度かかる場合はあります)。
「まずはプログラミングが自分に合っているか試してみたい」「借金をしてまでスクールに通うのは怖い」という方にとって、リスクゼロで挑戦できる環境は非常に貴重です。
2. 失業保険(基本手当)を受給しながら学べる「受講指示」
これが最大のメリットです。
ハローワークの「受講指示」を受けて職業訓練校に通うと、以下の優遇措置が受けられます。
- 失業給付の即時支給:通常、自己都合退職の場合は2〜3ヶ月の給付制限期間がありますが、これが解除され、すぐに支給が始まります。
- 給付期間の延長:訓練期間中は、本来の支給日数が終了しても、訓練終了まで給付が延長されます(訓練延長給付)。
- 手当の加算:通所手当(交通費)や受講手当(日額500円程度)が別途支給されます。
つまり、生活費の心配を最小限に抑えながら、学習に専念できる環境が手に入るのです。
これは有料スクールには絶対に真似できない制度です。
3. 就職支援(キャリアコンサルティング)が手厚い
職業訓練校の運営側は、受講生の就職率を国や自治体に報告する義務があります。
そのため、就職支援には非常に力を入れています。
- 履歴書・職務経歴書の添削
- 模擬面接の実施
- キャリアコンサルタントによる個別面談
- 企業説明会の開催
孤独になりがちな就職活動において、相談できる相手が常にいることは大きな精神的支えとなります。
特に「就職活動のやり方がわからない」という方には強力なサポートとなります。
【データと現実】職業訓練からの就職率と就職先の実態
「本当に就職できるの?」という疑問に対し、データと現場の実態から解説します。
公表されている就職率は高いが「中身」に注意
多くの職業訓練校では、就職率「70%〜80%」といった高い数値を公表しています。
しかし、この数字を鵜呑みにしてはいけません。
この数字には以下のカラクリが含まれている場合があります。
- IT職種以外への就職も含まれる:プログラミングコースを卒業して、事務職や営業職、販売職に就いた場合も「就職」としてカウントされます。
- 非正規雇用も含まれる:正社員だけでなく、契約社員やアルバイト・パートでの就職もカウントされることがあります。
「就職率」ではなく、「ITエンジニアとしての正社員就職率」を確認することが重要です。
説明会などで、過去の卒業生が具体的にどのような職種に就いたのかを質問するようにしましょう。
未経験からの就職先はSES(客先常駐)がメイン
前述の通り、職業訓練校からWeb系自社開発企業への就職は狭き門です。
現実的なルートとしては、以下のようなステップになります。

最初はSES企業でテスターや運用保守などの下流工程からスタートし、そこで実務経験と信用を積み重ね、2〜3年後に希望する企業へ転職するというキャリアパスが一般的です。
「最初からGoogleのような働き方ができる」という幻想は捨て、長期的な視点を持つことが成功の鍵です。
年齢による就職の壁(20代と30代以降の違い)
IT業界は実力主義と言われますが、未経験採用においては年齢が大きく影響します。
- 20代:ポテンシャル採用が期待でき、職業訓練校のレベルでも学習意欲が高ければ、比較的スムーズに就職が決まります。
- 30代以降:未経験からの採用枠が激減します。「プログラミングができる」だけでなく、前職でのマネジメント経験や業界知識(ドメイン知識)など、プラスアルファの強みをアピールする必要があります。30代後半で未経験の場合、訓練校を出てもIT職種への就職はかなり厳しい現実があることを覚悟しておく必要があります。
職業訓練校と有料プログラミングスクールの違いを徹底比較
どちらに通うべきか迷っている方のために、職業訓練校と一般的な有料プログラミングスクール(転職保証型など)を比較しました。
| 比較項目 | 職業訓練校(公的職業訓練) | 有料プログラミングスクール |
|---|---|---|
| 費用 | 原則無料 | 30万〜80万円程度 |
| 給付金 | 失業手当+交通費など | 教育訓練給付金(条件あり) |
| 学習言語 | Java, PHP, C言語など(基礎重視) | Ruby, Python, Go, AWSなど(モダン) |
| 講師の質 | 元エンジニア、講師業専門など | 現役エンジニアが多い |
| 就職支援 | キャリアコンサル、ハローワーク求人 | 転職エージェント提携、独自求人 |
| ポートフォリオ | カリキュラム内で簡易作成 | オリジナルアプリ作成支援あり |
| 授業スタイル | 平日毎日通学(学校形式) | オンライン・動画学習が中心 |
コストパフォーマンスで選ぶなら「職業訓練校」
お金をかけずに、生活を保障されながら学びたいなら、職業訓練校一択です。
特に、離職中で貯金に不安がある方は、有料スクールの高額なローンを組むリスクを避けるべきです。
スピードとモダン技術を求めるなら「有料スクール」
「最短でエンジニアになりたい」「どうしてもWeb系自社開発企業に行きたい」「Ruby on RailsやAWSを学びたい」という明確な目標がある場合は、有料スクールの方が近道です。
お金を「時間と質」に投資するという考え方です。
失敗しない職業訓練校の選び方と事前準備
「職業訓練校に行ってよかった」と思えるかどうかは、学校選びと事前準備で9割決まります。
適当に選んでしまうと、時間を無駄にするだけです。
1. 見学会・説明会には必ず参加し「空気感」を確認する
Webサイトやパンフレットの情報だけで決めてはいけません。
必ず見学会に参加し、以下のポイントをチェックしてください。
- 教室の雰囲気:受講生は真面目に取り組んでいるか?PCのスペックは古すぎないか?
- 講師の対応:質問に対して的確に答えてくれるか?
- 就職実績:「昨年の卒業生のうち、何人がITエンジニアとして正社員になりましたか?」とズバリ聞いてみてください。言葉を濁すようなら要注意です。
2. カリキュラムの言語を確認する(Excel VBAは注意)
「プログラミング科」という名前でも、中身を確認すると「Word・Excel・Access・VBA」が中心のコースがあります。
これらは事務職向けのスキルであり、エンジニアを目指すためのものではありません。
エンジニアを目指すなら、Java、PHP、Python、JavaScriptなどがメインのコースを選んでください。
3. 事前学習(Progate/Dotinstall)で適性を確認する
職業訓練校の選考には「面接」と「筆記試験」があります。
人気コースは倍率が高く、落ちることも珍しくありません。
また、入学してから「やっぱりプログラミングは面白くない」と気づくのは最悪です。
申し込みをする前に、無料の学習サイト(Progateなど)で実際にコードを書いてみてください。
「楽しい」「もっと知りたい」と思えなければ、職業訓練校に通っても挫折する可能性が高いです。
また、少しでも触っておくことで、面接時の志望動機に説得力が増し、合格率も上がります。
職業訓練校が向いている人・向いていない人
最後に、あなたが職業訓練校を選ぶべきかどうか、判断基準をまとめます。
向いている人
- 現在離職中(または退職予定)で、雇用保険を受給できる人
- 金銭的な余裕がなく、無料で学びたい人
- 独学ではサボってしまいそうなので、毎日通学して強制的に学習したい人
- まずはIT業界への切符(SESなど)を手に入れ、そこから這い上がる覚悟がある人
- 協調性があり、クラスメイトとうまくやっていける人
向いていない人
- 仕事を辞めずに、働きながら学びたい人(職業訓練は原則、平日昼間の受講です)
- 最新のWeb技術(React, AWS, Dockerなど)をバリバリ学びたい人
- 短期間(1〜2ヶ月)で即戦力になりたい人
- 最初からフルリモートや高年収の自社開発企業しか眼中にない人
- 集団行動が苦手で、自分のペースだけで進めたい人
まとめ
職業訓練校のプログラミングコースは、決して「やめとけ」と一蹴されるような悪いものではありません。
「お金をもらいながら勉強ができる」という、世界的に見ても稀有なほど恵まれた制度です。
評判が悪くなる主な原因は、「学校に行けば自動的にエンジニアになれる」「楽して高給取りになれる」という受け身の姿勢と過度な期待にあります。
- カリキュラムの不足分は独学で補う
- 就職活動は学校任せにせず、自分でもエージェントを使う
- 最初の就職先はキャリアの第一歩と割り切る
このような主体的な姿勢があれば、職業訓練校はあなたの人生を大きく変える最高の踏み台となるはずです。
まずはハローワークに行き、どのようなコースが募集されているか確認し、説明会に参加することから始めてみてください。
あなたの挑戦を応援しています。
