Web上で「プログラミングスクール」と検索すると、サジェストキーワードに「やめとけ」「無駄」「後悔」といったネガティブな言葉が並んでいるのを目にして、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
安くはない受講料を支払う以上、失敗したくないと考えるのは当然のことです。
結論から申し上げますと、プログラミングスクールに通えば誰でもエンジニアになれるわけではありません。
しかし、それは「スクールがすべて悪」という意味ではなく、利用する側の目的意識やスタンスによって、その価値が天と地ほど変わるという現実があるからです。
この「やめとけ」という言葉の裏にある真意を理解せずに受講を決めると、大切なお金と時間をドブに捨てることになりかねません。
本記事では、なぜ「やめとけ」と言われるのかの構造的な理由から、スクール受講が無駄になってしまう人の特徴、そして逆にスクールを賢く利用してキャリアチェンジを成功させるための具体的な戦略までを、徹底的に解説します。
「プログラミングスクールはやめとけ」と言われる5つの理由
多くの現役エンジニアや経験者が「スクールはやめとけ」と警鐘を鳴らすのには、明確な根拠があります。
単なるポジショントークではなく、業界の構造や学習の性質に基づいた5つの理由を深掘りしていきましょう。

高額な受講料とコストパフォーマンスの問題
最大の理由は、やはり受講料の高さにあります。
一般的なプログラミングスクールの相場は、3ヶ月から6ヶ月のコースで30万円〜80万円程度です。
中には100万円を超えるコースも存在します。
一方で、現在はUdemyやProgate、ドットインストールといった、月額1,000円〜数千円、あるいは数千円の買い切りで利用できる極めて質の高い独学用教材が豊富に揃っています。
もし「プログラミングの基礎文法を覚える」ことだけが目的であれば、スクールに数十万円を払うのは明らかにコストパフォーマンスが悪すぎます。
「知識」そのものに数十万円の価値があるのではなく、「環境」や「サポート」に価値を見出せるかどうかが判断の分かれ目となりますが、ここを履き違えて「高いお金を払えば魔法のようにスキルが手に入る」と錯覚してしまうと、大きな後悔に繋がります。
質の低いスクールや講師が存在する現実
残念ながら、すべてのプログラミングスクールが良心的な教育機関であるとは限りません。
中には、「エンジニア不足」という社会課題に乗じ、質の低いカリキュラムを高額で販売しているスクールも存在します。

特に問題視されるのが講師の質です。
「現役エンジニア講師」と謳っていても、実際にはそのスクールを卒業したばかりで実務経験がほとんどない「卒業生メンター」がマニュアル通りの回答しかしないケースがあります。
また、教材の内容が古く、現在の開発現場では使われていない技術(例えば、古いバージョンの言語や非推奨のライブラリなど)を教えている場合もあります。
jQueryばかりを教え込み、現代の主流であるReactやVue.js、TypeScriptに触れないようなカリキュラムでは、卒業後の就職活動で苦戦を強いられることになります。
「受講=転職成功」という誤解と実態
「受講すれば転職できる」「就職保証」という甘い言葉も、「やめとけ」と言われる要因の一つです。
スクールに通うことはあくまで「学習のスタートライン」に立ったに過ぎず、転職の成功を約束するものではありません。
多くのスクールが提示する「転職成功率98%」などの数字には、カラクリがある場合があります。
例えば、希望する自社開発企業や受託開発企業ではなく、誰でも入れるような質の低いSES企業(客先常駐)や、テスター(テスト実施者)・コールセンター業務などの「開発を伴わない職種」への就職も「転職成功」としてカウントしているケースです。
「エンジニアになれると思っていたのに、実際はエクセルにスクリーンショットを貼り付けるだけの仕事だった」という悲劇は、スクール選びと業界研究を怠った際によく起こります。
挫折率の高さと学習継続の難しさ
プログラミング学習は、想像以上にハードです。
特に初学者は、環境構築でつまづき、エラーの意味が分からず、数時間パソコンの前でフリーズするという経験を必ずします。
スクールに入ったからといって、この「産みの苦しみ」がなくなるわけではありません。

独学での挫折率は90%とも言われますが、スクール受講生であっても、カリキュラムについていけずにドロップアウトする人は決して少なくありません。
仕事終わりの疲れた体で、難解なコードと向き合い続けるには、並々ならぬ覚悟が必要です。
「お金を払ったから誰かが何とかしてくれる」という受け身の姿勢では、最初の壁にぶつかった時点で心が折れてしまいます。
現場で通用するスキルが身につかないケース
スクールのカリキュラムを完走し、卒業制作(ポートフォリオ)を作ったとしても、それが「現場で通用するレベル」とは限りません。
多くのスクールでは、手順通りに進めれば完成するチュートリアル形式の学習が中心です。
しかし、実際の現場で求められるのは、以下のような能力です。
- 仕様が曖昧な状態から要件を定義する力
- 既存の巨大なソースコードを読み解く力(リーディング)
- チーム開発におけるバージョン管理(
Git/GitHub)の作法 - エラーが発生した際に、自力で原因を特定し解決するデバッグ能力
スクールで作るポートフォリオが、単なる「教材のコピー」や「よくあるToDoアプリ」のレベルであれば、採用担当者からは「実務能力なし」と判断されます。
「スクールで習ったこと」と「仕事で必要なこと」の間には、依然として大きなギャップが存在することを理解しておく必要があります。
スクール受講が無駄になる人の特徴
「スクールに通ったのに何も身につかなかった」「お金を無駄にした」と後悔する人には、共通した行動パターンや思考の癖があります。
これらに当てはまる場合、スクールへの入会は一旦立ち止まって考え直すべきです。

受け身の姿勢で自律的に学習できない
最も危険なのが、「お客様マインド」です。
「高い受講料を払っているのだから、手取り足取り教えてもらえるはずだ」「カリキュラムさえこなせば、スクールがエンジニアにしてくれる」と考えている人は、ほぼ確実に失敗します。
プログラミングの世界では、技術は日々進化しており、現役のエンジニアでさえ毎日検索し、ドキュメントを読み込んでいます。
Uncaught TypeErrorのようなエラーが出たときに、自分でググって解決しようとせず、すぐに「わかりません、教えてください」と講師に丸投げする姿勢では、いつまで経っても自走力(自力で問題を解決する力)が身につきません。
スクールはあくまで「学習を加速させる補助輪」であり、漕ぐのは自分自身であることを忘れてはいけません。
プログラミングを学ぶ目的が曖昧
「なんとなく将来が不安だから」「流行っているから」といった漠然とした理由だけで受講すると、学習のモチベーションが続きません。
プログラミングは手段であり、目的ではありません。
- 「Webサービスを作って起業したい」
- 「場所を選ばない働き方をするために、Web系自社開発企業に転職したい」
- 「現在の業務を効率化するツールを作りたい」
このように、「プログラミングを習得した後に何をしたいのか」が明確でないと、難解なエラーに直面したときに「なんでこんな苦しい思いをしてまでやっているんだろう」と自問自答し、挫折してしまいます。
楽に稼げると安易に考えている
SNSやYouTubeの広告で見かける「未経験から3ヶ月で月収50万円」「フリーランスで自由に働く」といったキラキラした言葉を鵜呑みにしている場合も要注意です。
確かにエンジニアは高収入を目指せる職種ですが、それは数年の実務経験と不断の学習を積み重ねた先にある結果です。
未経験からいきなり高単価の案件を獲得したり、楽に稼げるようになったりすることは、現実にはほぼあり得ません。
下積み時代(学習期間や駆け出しエンジニア期間)の泥臭い現実を直視できず、「楽に稼げる裏ワザ」としてプログラミングスクールを選んでいるなら、その期待は大きく裏切られることになります。
講師やメンターへの質問を活用しない
せっかく高いお金を払ってスクールに通っているのに、講師やメンターを使い倒さないのは非常にもったいないことです。
「こんな初歩的なことを聞いたら馬鹿にされるのではないか」「自分で調べなきゃいけないと言われたし…」と遠慮して質問をためらう人がいますが、これでは独学と変わりません。
スクールの最大の価値は「経験者に質問できる環境」にあります。
ただし、丸投げはNGです。
「自分はこう考えて、ここまで調べたが、ここが分からない」という仮説を持った上で積極的に質問することで、思考プロセスを修正してもらうことができます。
このフィードバックサイクルを回せない人は、スクールのメリットを享受できません。
逆にプログラミングスクールが向いている人
ここまで厳しい現実をお伝えしてきましたが、すべての人がスクールに向いていないわけではありません。
実際にスクールを有効活用し、未経験から見事にエンジニア転職を成功させている人も多数存在します。
スクール受講が「投資」として成立するのは、以下のようなタイプの人です。

独学での限界や時間の浪費を避けたい
独学は費用がかかりませんが、時間がかかります。
何から学ぶべきかのロードマップ作り、教材選び、環境構築のエラー解決など、学習の本質以外の部分で大量の時間を消費しがちです。
「時は金なり」と割り切り、「お金を払って時間を買う」という考え方ができる人には、スクールは最適です。
体系化されたカリキュラムと、エラー解決のサポートがあることで、独学なら1年かかる内容を3ヶ月〜半年で習得することも可能です。
最短ルートで結果を出したい合理的な判断ができる人に向いています。
短期間で効率的にエンジニア転職を目指す
趣味ではなく、「転職」という明確な期限付きのゴールがある場合、スクールの利用価値は高まります。
多くのスクールでは、転職市場のトレンドに合わせた技術選定を行っています(例:求人数が多いJavaやPHP、モダンなRuby on Railsなど)。
独学では「作りたいもの」を優先してしまい、市場価値の低い技術を学んでしまうリスクがありますが、スクールであれば「就職するための最短ルート」を提示してくれます。
キャリアチェンジの時期を決めており、そこに向けて効率的に動きたい人には強力な武器となります。
強制力のある環境でモチベーションを維持したい
人間は弱い生き物です。
一人ではどうしても「今日は疲れたから明日やろう」とサボってしまいがちです。
スクールに通う(あるいはオンラインでログインする)ことで、「学習せざるを得ない環境」を自分に課すことができます。
また、同じ目標を持つ同期の存在や、メンターとの定期的な面談が進捗管理の役割を果たします。
「メンターに進捗を報告しなければならない」という適度なプレッシャーが、学習を継続するエンジンになります。
自制心に自信がない人こそ、環境の力を借りるべきです。
専門的なキャリアサポートを必要としている
技術力だけでなく、転職活動そのもののサポートを受けられるのも大きなメリットです。
IT業界特有の職務経歴書の書き方、ポートフォリオのアピール方法、面接での回答テクニックなどは、一般的な転職エージェントではカバーしきれない部分があります。
スクールのキャリアアドバイザーは、未経験エンジニアの採用基準を熟知しています。
「自分の経歴をどうエンジニアとしてアピールするか」という戦略部分でプロの知見を借りられるのは、一人で転職活動をする場合に比べて圧倒的に有利に働きます。
後悔しないためのスクール選びのポイント
「スクールに通う」と決めた場合でも、どこのスクールを選ぶかで結果は大きく変わります。
広告のイメージだけで選ばず、以下のポイントを冷静に見極めてください。

自分のゴールに合ったカリキュラムを選ぶ
まず、自分が「どのようなエンジニアになりたいか」によって学ぶべき言語や技術は異なります。
- Web系自社開発企業に行きたい:
Ruby (Rails)、PHP (Laravel)、JavaScript (React/Vue)などが強いスクール。 - AI・機械学習をやりたい:
Python特化型のスクール。 - 大規模システム開発(SIer):
Javaを中心としたカリキュラム。
「なんとなく有名だから」という理由で、自分の目指す方向と異なる技術を教えるスクールに入ってしまうと、卒業後に「やりたい仕事と違う」というミスマッチが起きます。
カリキュラムの詳細と、その技術がどの分野で使われているかを必ず確認してください。
無料カウンセリングで相性を確認する
Webサイトの情報だけで入会を決めてはいけません。
必ず複数のスクールの無料カウンセリングを受けてください。
カウンセリングでは、以下の点を確認しましょう。
- 「未経験からでも絶対稼げます」といった誇大広告のような発言がないか(誠実なスクールはリスクも説明します)。
- 自分の現状や目標をヒアリングした上で、具体的なプランを提案してくれるか。
- 学習システムや質問対応の雰囲気が自分に合っているか。
営業担当者の対応は、そのスクールの質を映す鏡です。
違和感を感じたら、その直感を信じて避けるのが無難です。
転職実績や卒業生のリアルな評判を調べる
公式サイトに掲載されている「卒業生の声」は、成功事例のみを抽出した広告です。
よりリアルな実態を知るためには、SNS(Xなど)で実際に受講している人や卒業生の生の声を検索してみましょう。
「スクール名 + 微妙」「スクール名 + 転職できない」などのネガティブキーワードで検索すると、見えていなかったデメリットが見つかることがあります。
また、転職実績については「転職率」だけでなく「具体的な就職先企業名」を確認してください。
有名企業や自社開発企業の実績が多いのか、名前も知らないSES企業ばかりなのかを見ることで、そのスクールの教育レベルと業界内での評価が推測できます。
教育訓練給付金などの制度を活用する
最後に、コストを抑えるための重要なポイントです。
日本には、厚生労働省が認定した「教育訓練給付制度」という仕組みがあります。
この制度の対象となっている講座を受講し、一定の条件を満たして修了・転職した場合、受講料の最大70%(上限56万円など)が国から給付(キャッシュバック)されます。
例えば、80万円のコースでも、給付金を活用すれば実質24万円程度で受講できる場合があります。
この制度対象か否かで、経済的な負担は劇的に変わります。
受講を検討しているスクールが「専門実践教育訓練給付金」などの対象講座を持っているか、必ず確認・問い合わせをしましょう。
まとめ
「プログラミングスクールはやめとけ」という言葉は、安易な気持ちで受講して失敗した人たちの後悔の声であり、同時に「スクールは魔法の杖ではない」という真実を表しています。
しかし、以下の条件を満たせるのであれば、スクールはあなたの人生を変える強力なツールになります。
- 「お客様」ではなく「主体者」として学習に取り組む覚悟がある。
- プログラミングを学ぶ目的と、その後のキャリアビジョンが明確である。
- 講師やメンターを使い倒し、能動的にスキルを吸収できる。
- 自分に合ったカリキュラムを選び、給付金などを賢く利用する。
最終的に、エンジニアになれるかどうかを決めるのは、スクールの質よりも「あなた自身がどれだけ手を動かし、悩み、コードを書き続けたか」にかかっています。
ネガティブな意見に惑わされすぎず、自分の目的達成のためにスクールが必要かどうか、冷静に判断してください。
覚悟を決めたあなたにとって、この記事が良い選択の一助となれば幸いです。
