プログラミングの勉強法としてよく耳にする「写経」。
本を開きながらひたすらコードを書き写すだけで、本当に力が付くのかと疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、プログラミング写経の具体的な効果と、初心者が最速で成長するための写経のやり方を、再現性の高いステップとともに解説します。
独学で伸び悩んでいる方や、「写経=作業」で終わらせたくない方に向けて、学習効率を最大化するコツも詳しくお伝えします。
プログラミング写経とは何か
プログラミング写経とは、他人が書いたソースコードを自分の手で一行ずつ書き写し、同じ動作を再現する学習方法です。
日本語の「写経」という言葉通り、写経そのものは新しいコードを生み出す行為ではありませんが、正しいやり方をすれば理解やスキルの土台を固める強力なトレーニングになります。
「コピペ」との違い
コピー&ペーストと写経は、見た目は似ていますが学習効果は大きく異なります。
コピペではコードの意味を理解しなくても動いてしまうのに対し、写経では自分の手と頭を使うため、コード構造の理解が進みます。
特に初心者にとって、手を動かしながら「なぜこう書くのか」を意識するかどうかが、学習効果を大きく左右します。

このように、同じコードを扱っていても、学習行為としては別物と考えた方がよいでしょう。
写経で得られる主な5つの効果
プログラミング写経にはさまざまな効果がありますが、初心者にとって特に重要なものを5つに整理して説明します。
1. 正しいコードの「型」が身につく
写経の最大の効果は、言語ごとの書き方や記法の「型」を体で覚えられることです。
文法書で理屈を読むだけでは、「実際のコードがどう並ぶのか」がイメージしにくいものです。
写経を通して、例えば次のような感覚が自然と身についていきます。
- 変数や関数の名前の付け方の傾向
- if文やループの書き方、インデントの位置
- ファイル構成や、モジュールの分割の仕方
文章を読んで日本語を身につけるのと同じように、良質なコードをなぞることで「コードとして自然な書き方」を吸収できます。
2. 「タイピング力」ではなく「コード入力の筋力」がつく
写経を続けると、タイピングスピードが上がるだけではなく、プログラミング特有の記号やショートカットに慣れ、コード入力の筋力がつきます。
例えば、次のような変化が起こります。
()や{}、[]の入力がスムーズになる- IDEやエディタの補完機能を自然に使いこなせる
- よく使うパターンをほとんど無意識に打てるようになる
これにより、「コードを書きたいのに指が追いつかない」というストレスが減り、思考に集中しやすくなります。
3. エラーの読み方・調べ方が身につく
写経をしていると、想像以上に多くのエラーに出会います。
わずかなタイプミスや、環境の違いなどが原因で、教材通りに写したはずのコードが動かないことも少なくありません。
しかし、この「うまく動かない経験」こそが学習の宝です。
- エラーメッセージを読む習慣がつく
- 英語のエラーメッセージに慣れる
- エラー文言をそのまま検索して情報を集めるスキルが育つ
現場で求められるのは、「一度で完璧に書く力」ではなく、「問題が起きたときに原因を突き止める力」です。
写経はその縮図を安全な環境で体験させてくれます。
4. 「読めるコード」が増えて応用力の土台になる
プログラミングは「書く力」と同じくらい「読む力」が重要です。
写経は、自分でコードを書き写す過程で、自然と他人のコードを読む訓練にもなります。
同じ言語でも、著者や開発者によって書き方は微妙に異なります。
複数の教材やOSSのコードを写経すると、次のようなメリットがあります。
- 違う書き方を見ても怖くなくなる
- ちょっと複雑なコードでも、構造を追えるようになる
- 自分のコードに「良い書き方」を取り入れられる
このように、写経は「読めるコードのバリエーション」を増やし、後の応用学習の土台を作ります。
5. 「最後まで動かす」成功体験が得られる
完全初心者がいきなりオリジナルアプリを作ろうとしても、完成までたどり着けず挫折するケースが少なくありません。
写経の良さは、比較的短時間で「動くもの」を完成させやすいことです。
教材通りに進めれば、
- コードを書く
- 実行する
- 実際に画面が動いたり、結果が表示される
というサイクルを短く回せます。
「自分の手で動かした」という小さな成功体験を積み重ねることが、継続のエネルギーになります。
写経だけでは伸びないと言われる理由
一方で、ネット上では「写経は意味がない」「時間の無駄」という意見も見かけます。
これは、写経そのものが悪いのではなく、やり方や期待値を間違えているケースが多いです。
「理解ゼロの作業」になっている
画面を見て、何も考えずにただ書き写すだけでは、学習効果はほとんど期待できません。
漢字ドリルを写すときに、意味も読みも考えず、形だけ真似しているのと同じ状態だからです。
この場合、
- コードの意味が頭に残らない
- 同じようなコードを自分では再現できない
- エラーが出ても、どこを見ればいいか分からない
といった状態になりやすくなります。
「書き写して終わり」でアウトプットにつながらない
写経はあくまでインプット寄りの学習です。
写経ばかりを長期間続けて、自分で「書いてみる」「アレンジしてみる」段階に進まないと、実践力が育ちません。
「写経だけでエンジニアになれる」と期待してしまうと、現実とのギャップにがっかりしてしまいます。
写経は、次の学習ステップにつなげるための「踏み台」として位置づけるのが現実的です。
初心者が最速で伸びる写経のやり方
ここからは、初心者が最速で伸びるための具体的な写経の手順を紹介します。
ただ書き写すのではなく、「成長につながる写経」にするための工夫を盛り込んでいます。

ステップ1: 教材選びは「短く・動かしやすい」ものから
まず重要なのが教材選びです。
最初から分厚い本や巨大なプロジェクトを写経するのはおすすめできません。
初心者に適した教材の条件は次の通りです。
- サンプルコードがダウンロードできる、もしくはWeb上で公開されている
- 1つのサンプルが短く、10〜30分程度で動作確認まで行える
- 実行環境の準備方法が丁寧に書かれている
- 画面や出力結果の例が掲載されている
「1つのサンプルをきちんと動かす経験」を積み重ねることが、最速で伸びる近道です。
ステップ2: 写経前に「ゴール」を一言で決める
写経を始める前に、そのコードを写す目的を一言でメモしておくと、意識が大きく変わります。
例えば次のような形です。
- 「フォーム送信の流れを理解したい」
- 「Promiseの書き方を体で覚えたい」
- 「ルーティングの設定の雰囲気をつかみたい」
このようにゴールを決めておくと、写経中に「ここが今日の学びのポイントだ」と自分で気づきやすくなります。
メモはエディタのコメントやノートアプリで構いません。
ステップ3: 「声に出して説明しながら」写す
実際に写経するときは、ただ写すのではなく、自分に説明しながら書くことが大きな差になります。
声に出しても、頭の中でつぶやくだけでも構いません。
例えば、次のようなイメージです。
constを書きながら「ここで定数を定義している」if (score > 80)を書きながら「80点より大きいときだけこの中が動く」- 関数定義を書きながら「この関数は〇〇を受け取って△△を返す」
「読めるコード」にするには、コードを自分の言葉で説明できることが重要です。
説明しながら写すことで、自然と理解が深まります。
ステップ4: 必ず「実行」と「エラー対応」までやる
写経が「作業」で終わってしまう最大の原因は、書き終わったところで満足してしまうことです。
コードを書き終えたら、必ず次の2ステップまで行いましょう。
- 実行して、教材と同じ結果になるか確認する
- 違う場合は、どこが違うのかを調べて修正する
このとき、すぐに答えを見るのではなく、
- エラー文言を読む
- 行番号から該当行を見直す
- 自分のコードと教材のコードを見比べる
といったプロセスを意識的に行うことが大切です。
この「エラーと向き合う練習」こそが、写経の価値の半分以上を占めています。
ステップ5: 最後に「ほんの少し」だけアレンジする
最速で伸びるためには、写経で終わらせず、ごく小さいアレンジを加えることが重要です。
いきなり大改造する必要はありません。
例えばこんな程度で十分です。
- 画面に表示するテキストを変えてみる
- 変数名を自分なりに分かりやすい名前に変える
- 条件分岐の条件を少し変えてみる
- ループの回数を増やしてみる
重要なのは、「自分の意思でコードを変え、その結果を確認する」経験をすることです。
この小さな一歩が、オリジナルのコードを書けるようになるための橋渡しになります。
どのくらい写経すればいいのか
「写経は何本くらいやればいいですか?」という質問をよく見かけます。
結論から言うと、量よりも「質」と「次のステップへのつなげ方」が重要です。
目安は「1テーマにつき2〜3パターン」
例えば、条件分岐(if)やループ(for)など、特定のテーマについては2〜3種類のサンプルを写経してみるのがおすすめです。
- if文を使った簡単な分岐を2パターン
- for文を使ったループを2パターン
- 関数定義と呼び出しを2〜3パターン
これくらいを目安に写経したら、一度手を止めて、自分で似たようなコードを書いてみる時間を取りましょう。
「写経 → 小さな自作」のミニサイクルを回す
学習全体としては、次のようなサイクルを意識すると効率的です。
- テーマを決める(例: 条件分岐)
- そのテーマのサンプルコードを2〜3本写経する
- 自分で小さなコードを書いてみる
- 分からなかった部分を振り返り、必要なら再度写経する

1回の写経を長時間やるよりも、このミニサイクルを何度も回した方が、定着と成長スピードは確実に上がります。
写経を最大限活かすための実践テクニック
ここからは、日々の学習にすぐ取り入れられる、写経のちょっとしたテクニックを紹介します。
テクニック1: 1画面に「教材」「エディタ」「実行結果」を並べる
画面レイアウトを工夫するだけで、写経のストレスは大きく減ります。
可能であれば、次の3つを同時に見えるようにしましょう。
- 教材のコード(ブラウザやPDF)
- 自分のエディタ
- 実行結果やコンソール

これにより、
- コードを見ながらすぐに写せる
- 書いたそばから実行して結果を確認できる
- エラーとエディタの該当行を素早く行き来できる
といったメリットが得られます。
テクニック2: 気になった行にだけ軽くコメントを書く
すべての行を理解しようとすると疲れてしまうので、「これは重要そう」「まだよく分からない」と感じた行にだけコメントを残す方法がおすすめです。
例:
// ユーザー一覧を取得している?(どこからデータが来ている?)
const users = await fetchUsers()
理解できなかった部分を「見える化」しておくことで、後でピンポイントに復習しやすくなります。
テクニック3: タイマーを使って「短時間集中」で区切る
写経は集中力を使う作業なので、ダラダラ続けると疲れ切ってしまいます。
1セット25〜30分程度を目安に、タイマーで区切って取り組むと効率的です。
1セットの中での理想的な配分は次のようなイメージです。
- 15〜20分: 写経(説明しながら)
- 5〜10分: 実行・エラー対応・軽いアレンジ
「1セットで1つのサンプルを動かせた」という小さな達成感を積み重ねることが、継続のコツです。
写経と他の学習法をどう組み合わせるか
最後に、写経をどのように他の学習法と組み合わせればよいかを簡潔に整理します。
写経と相性の良い学習法
特に相性が良いのは、次の3つです。
- 基礎文法の解説動画・書籍
解説でざっくり理解 → サンプルコードを写経、という流れが王道です。 - 小さな模写アプリ開発
既存の簡単なアプリ(電卓、Todoリストなど)のコードを写経し、その後少しだけ機能を増やしてみると、写経から自作への橋渡しになります。 - オンラインジャッジや練習問題
ある程度基礎が固まったら、短いコードを書く練習問題に挑戦し、必要に応じて解答コードを写経する流れが効果的です。
中級以降は「写経の比率」を下げていく
ある程度自分でコードを書けるようになったら、写経の比率は徐々に下げていくのがおすすめです。
代わりに、次のような活動の比率を増やしていきます。
- 自分で小さなツールやスクリプトを作る
- OSSのコードを「読む」時間を増やす(必要な部分だけ写経)
- チーム開発や模擬プロジェクトに参加して、他人のレビューを受ける
写経はあくまで「スタートダッシュを支える加速装置」と考え、自分のレベルに応じて役割を変えていくことが大切です。
まとめ
プログラミング写経は、やり方次第で初心者が最速で伸びるための強力な学習法になります。
一方で、何も考えずにただ書き写すだけでは、時間のわりに得られるものは多くありません。
この記事で紹介したポイントをあらためて整理すると、次のようになります。
- 写経の本質的な効果は、「コードの型」を体で覚え、エラーと向き合う経験を積めること
- 最速で伸びるためには、写経前のゴール設定と、実行・エラー対応・小さなアレンジまでをセットで行うことが重要
- 量よりも「1テーマにつき2〜3パターン → 自作で試す」というミニサイクルを回す方が定着しやすい
- 画面レイアウト、コメントメモ、短時間集中などのちょっとした工夫で、学習効率は大きく変わる
- 中級以降は写経の比率を下げ、自作や実践的な開発に軸足を移していく
「とりあえず写経してみる」から、「目的を持って写経する」へ。
この意識の切り替えができれば、同じ30分の写経でも得られる成長は大きく変わります。
今日取り組むサンプルコードを1つ決め、ゴールを一言メモするところから、ぜひ始めてみてください。
