プログラミングを学ぶときに、多くの人が最初にぶつかる壁が「暗記すべきなのか、それとも理解が大事なのか」という迷いです。
文法や用語がたくさん出てくる一方で、「暗記ではなく理解だ」ともよく言われます。
このギャップが混乱や挫折を生みがちです。
本記事では、暗記と理解のバランスを整理しながら、挫折しにくい勉強法の「現実的な結論」をお伝えします。
プログラミングは暗記か理解か?結論から
結論として、プログラミング学習は「暗記か理解か」の二者択一ではなく、段階によって役割が変わる組み合わせです。
もう少し具体的に分解すると、次のようになります。
- 最初の入口では「最低限の暗記」が必要
- すぐに「手を動かして理解する」に切り替えることが重要
- 長期的には「暗記せずとも調べて組み立てられる力」がゴール
この3つの視点を持っておくと、「暗記が苦手だからプログラミングは無理そう」といった早すぎる挫折を防ぎやすくなります。
「暗記だけの勉強」が危険な理由
プログラミングを「単語帳のように暗記だけで乗り切ろうとする」のは、ほぼ確実に行き詰まります。
理由はいくつかあります。
まず、実際のコードは文脈と組み合わせで意味が変化します。
同じifやforでも、どこに書くか、何と組み合わせるかで役割が変わります。
単体の文法だけを覚えても、実務的な問題には対応できません。
また、プログラミング言語やフレームワークはバージョンアップや新技術の登場で、「覚えたものが陳腐化する」スピードが速い分野です。
丸暗記を積み上げても、学習コストに対してリターンが少なくなりがちです。
「とにかく完璧に覚えてから次に進もう」とする完璧主義は、挫折の大きな原因になります。
文法書を最初から順番にまじめに読もうとするほど、「実際に動かす楽しさ」を味わえないまま飽きてしまうリスクが高まります。
それでも「覚えないと始まらない」もの
とはいえ、完全に暗記ゼロで進めるのも非現実的です。
プログラミングには、最低限「見た瞬間に意味が分からないと詰まりやすい」要素が確かに存在します。
暗記した方が楽になる「最低限の土台」
覚えるべきものは、分野や言語によって少しずつ違いますが、共通するのは次のようなレベル感です。
- よく登場するキーワードや構文の「顔とざっくりした役割」
例:if(条件分岐),for(繰り返し),function(関数定義) など - エラーメッセージで頻出する単語
例:undefined,syntax,permissionなど - 開発環境の基本操作
実行方法、保存方法、ターミナルの開き方など、毎回迷っていると先に進みません。
このレベルは「教科書を丸暗記する」のではなく、「よく見る顔ぶれを見慣れておく」イメージに近いと考えてください。

このように、スタート時点でのみ暗記の比重がやや高く、その後は急速に「理解と応用」にシフトしていくのが自然な姿です。
暗記に頼らない「理解ベース」の勉強とは
暗記ではなく理解を重視するとは、「仕組み」と「因果関係」を押さえることです。
ここでは、理解を深めるための3つの視点を紹介します。
1. 「入力と出力」で考える
どんなコードも、突き詰めると「入力(インプット)」と「出力(アウトプット)」で説明できます。
たとえば関数であれば、「何を渡すと、何が返ってくるのか」に注目してみてください。

まずは、「このコードは何を受け取って、何を返しているのか」を言葉で説明できることを目指すと、文法を丸暗記するより早く理解が深まります。
2. 「なぜこの書き方が必要か」をセットで覚える
文法を覚えるときは、「使い方」だけでなく「なぜこの形なのか」を一緒に押さえると、記憶に残りやすくなります。
例えば、非同期処理のawaitなら、「時間のかかる処理が終わるまで、次の行に進まないようにする仕組み」という目的があります。
この「目的」を理解せずにawaitという単語だけを覚えようとすると、少し時間が空いただけで忘れてしまいます。
「この記法は、どんな問題を解決するために存在しているのか」を意識すると、意味のない暗記量を減らせます。
3. エラーも含めて「挙動」を観察する
プログラムは、書いただけでは身につきません。
動かし、壊し、エラーを出し、その結果を観察する過程が理解に直結します。
同じコードでも、引数を変えたとき、順番を変えたとき、1行コメントアウトしたときなど、挙動がどのように変わるかを試してみてください。
「こう書くとこう動く」の経験値が増えると、教科書の説明が具体的なイメージと結びつきます。
「調べながら書く」のがプロの普通
ある程度学習が進むと、多くの人が次の疑問を持ちます。
「プロのエンジニアは、全部暗記しているのだろうか?」というものです。
結論から言うと、プロでも細かい文法や標準ライブラリの関数名をすべて暗記している人はほぼいません。
代わりに身につけているのは、次のようなスキルです。
- どのようなキーワードで検索すれば答えに近づけるか
- 公式ドキュメントや信頼できる情報源を素早く見つける方法
- 見つけたコードが自分の状況に合うかを判断する力
つまり、ゴールは「調べなくても全部書けること」ではなく、「調べながらでも、きちんと動くものを作れること」です。
この前提を理解しておくと、「全部覚えないとダメだ」というプレッシャーから解放されます。

挫折しにくい勉強法の「現実的な結論」
ここまでの話を、実際の勉強法に落とし込んでみます。
ポイントは「暗記」と「理解」と「手を動かす」の3つを、無理なく循環させることです。
ステップ1: 最低限の「顔なじみ」を作る
まずは、チュートリアルや入門書を1周しながら、頻出のキーワードや構文に触れます。
この段階では、すべてを理解しようとせず、「なんとなく見覚えがある状態」を作ることが目的です。
- 登場頻度の高いキーワードにマーカーを引く
- 全てを覚えようとせず、「よく出てくる単語リスト」を軽く眺める程度でよい
- 暗記カードやノートは、後から見返せる程度にシンプルにしておく
ステップ2: 小さなサンプルを「真似して動かす」
次に、サンプルコードを写経しつつ、少しずつ改造していく段階に進みます。
このときのコツは、必ず「動かす前」「動かした後」で自分の言葉による説明を加えることです。
- 「このコードは、何を入力するとどうなる想定か」をコメントで書いてから実行する
- 実行結果と想定がずれたら、その差分の理由を考えてみる
- 同じコードを、値だけ変えて数パターン試す
ここでの目的は、「覚えること」ではなく、「動き方のパターンを体で覚えること」です。
ステップ3: 小さな「自分用のツール」を作ってみる
ある程度サンプルに慣れたら、自分の日常で使えそうな、極小のツール作りに挑戦します。
例えば、次のようなものです。
- 家計簿の合計を自動で計算するスクリプト
- 仕事でよく使う定型文を出力するプログラム
- 好きなアニメの放送日リストを整理する簡単なアプリ
自分ごとの問題をコードで解決しようとすると、何を調べればよいか、どこまで分かれば十分かが自然と見えてきます。
この段階で初めて、「暗記していなくても、調べながら作りきる力」が少しずつ育っていきます。
ステップ4: 定着していない部分だけを「部分的に暗記補強」
実際に手を動かしてみると、何度調べても覚えられない箇所や、毎回同じところでつまずくポイントが見えてきます。
そこだけを狙って、ピンポイントに暗記を補強してください。
- 毎回間違える構文は、1つの紙に書き出してモニターの横に貼る
- よく使うショートカットキーやコマンドだけ、小さなチートシート化しておく
- 「今日はこの1つだけ覚える」と狙いを絞る
このやり方なら、無意味な丸暗記のストレスを避けつつ、必要なところだけ着実に定着させることができます。
暗記への不安を減らす「考え方のリセット」
最後に、暗記に対するプレッシャーを軽くするための考え方をいくつか紹介します。
「覚えたかどうか」より「再現できるか」を重視する
テスト勉強の感覚では、「覚えているかどうか」がゴールになりがちです。
しかしプログラミングでは、必要なときに必要な情報を取り出して、動かせるかどうかの方が重要です。
- 手元にメモやチートシートがあってもよい
- ネット検索しながらでもよい
- それでも毎回ゼロから調べ直さなくて済むなら、それは「十分に身についている状態」と考えてよい
「忘れる前提」で学習サイクルを設計する
人は必ず忘れます。
プログラミングだけが特別に忘れやすいわけではありません。
大切なのは、「忘れないこと」ではなく「思い出しやすい環境を用意しておくこと」です。
- 自分専用の「メモリスト」を1つだけに集約する
- コピペ用のスニペット集を作成する
- 過去に書いたコードをいつでも検索できるようにしておく
こうしておくと、「あれ、どう書くんだっけ」となっても、すぐに復帰できます。
「忘れても、すぐに取り戻せる」状態なら、学習としては十分合格です。
まとめ
本記事でお伝えしたかったのは、プログラミング学習は「暗記か理解か」という対立ではなく、それぞれの役割を理解したうえで使い分けることが大切だという点です。
- スタート時点では、よく出てくるキーワードや構文を「顔なじみ」にする程度の暗記があると楽になります。
- しかし学習の中心は、手を動かしてコードの挙動を観察し、「なぜそうなるか」を考える理解ベースで進めるべきです。
- ゴールは、すべてを暗記することではなく、調べながらでも、現実の問題をコードで解決できる力を身につけることです。
暗記が苦手でも、プログラミングをあきらめる必要はありません。
小さな暗記を入口に、理解と実践を積み重ねていけば、時間とともに「覚えていないと不安」という感覚は薄れていきます。
「暗記できないから向いていない」ではなく、「暗記一辺倒の学び方が合っていなかっただけ」と考え方を切り替えることが、挫折しないための第一歩になります。
